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「貧乏生活」「父子家庭」って、本当に辛くなかったの?
yuzuka 例えば批判のひとつとして、「お金のない状態でたくさんの子どもを作る」って部分に言及する方も多いと思うんですね。
お金がない状態で家族が過ごしていく。ご飯も満足がいかない量で、下手をすると自給自足しないといけない日もある。行きたいところに行けなかったり、欲しいものが手に入らなかったり。そういう部分について、子どもの頃に辛いなと感じた瞬間って、なかったですか?
都美さん そういう負の気持ちがなかったよね。自分で育てた野菜が食べられる。やったー!何にして食べよう!何を作ってもらおう!とか。そういうワクワクでいっぱいで。
柔美さん うーん。例えば、他の人の家に行って出てきたカレーが、自分の家のカレーと違う……。とか。そういうのはありましたけど(笑)だからといって羨ましいとかもなくて、「別にうちの家のカレーはうちの家のカレー」って、自然に受け入れていたので。それになにより……楽しかった。
都美さん うん。楽しかった。
柔美さん 毎日ずっと楽しかったよね。
都美さん 家が貧乏で、毎日みんなが喧嘩して、ピリピリしているような家だったら嫌だったと思うけど、そうじゃなかったし。
柔美さん 本当に自分たちが貧乏って知らないくらいに楽しかった。勿論、ギリギリのこともあったよね。公園に生えているアロエを食べにいくとか(笑)でも、それを取りに行くのも楽しかったんだよね。ワクワクして。お父さんはいつも、ゲーム形式にしてくれるので。辛さを感じさせないようにしてくれてたんだと思います。
都美さん 「こっそり取りに行こうね」って、みんなで相談して夜に取りに行くのが、本当に楽しかった(笑)
一般的な家庭とか、よく分からないですけど、その人達が同じような経験をしているとしたら、私達はそれ以上の体験や楽しさを経験してきたと思うんです。普通じゃできないような。いろんな地域にいって、そこでしか触れられないことに触れて。そういうこともたくさんさせてもらえたので。なので、自分が子どもを産んだとしても、同じような経験をさせてあげたいなって思えるくらい。
yuzuka いろんな大家族を見てきましたけど、どうしてもピリピリしたムードを漂わせている家庭って多くって。そういう家庭と比べたら、やっぱり林下一家って、特別楽しい雰囲気が漂っているように感じたのは、間違ってなかったんですね。
都美さん きっと、お父さんが、そういう苦労を全部を引き受けてくれてたんですよね。本当にあの人、欲がない人で。何が欲しいとかどこに行きたいとか、そういうのも一切なくて、子どものことだけを一番に考えてくれている人だから。だから、自分の寝る間も惜しんで、私達のために、見えない苦労を引き受けてくれてたんだなって。
柔美さん その頃は気づかなかったんですよ。毎日夜中も寝ずに働いていたこととか、そういうのも、大きくなってからお兄ちゃんに聞かされて。凄いなって。そういうとこ、本当に見せなかったんだなって。今、自分達が働く年齢になってみて、自分に同じことができるかなって考えてたら、できる気がしません。家事とかも、全部父親がやってたので。
小さい頃は洗濯機もなくて。8人分の洗濯を、毎日手洗いでやってくれてたんですよね。高校生になって、初めて自分の体操服を手で洗った時に、みんなでビックリして。
都美さん ね、びっくりしたよね。
柔美さん 三日目くらいに手の皮が剥けてきて。ああ、こんなことを毎日やってくれてたんだって思うと、「凄いな」って。そういうのも、小さい頃は気づけなかったので。だからこそ今になって、改めて一人の人間として尊敬するようになりましたね。
yuzuka 凄いですね……。連日連夜働いて、男で一つで子どもを育てるって、なかなかできることではないと思います。じゃあ、お二人とも、軽い反抗期はあったとしても、お父さんに対して真っ向から「なんだよ」って反発することもなく、そして今も、一人の人間として尊敬していらっしゃるんですね。
柔美さん 家のルールも、徹底されているので。例えば「嘘をつかない」って、うちの家で何よりも大事な決まり事なんです。
だから、私達がお父さんにウソを付くこともないし、お父さんがウソをつくことも、絶対にない。信頼関係が成り立ってるんです。それを絶対に壊したくないから、私達も嘘をつけません。だからみんな、「そんなことも言う?」ってことも、全部報告しあいます。
都美さん 女の子だと、「お母さんじゃなきゃ話しづらいよね」みたいなのもあると思うんですけど、うちの家はそういう「お父さんには恥ずかしくて言えない」みたいな状況を作らないようにしてくれていたので、全部話し合ってましたね。
柔美さん セクシャリティ的なタブーすら、家族の中ではないんですよね。恋バナとか、体の悩みとか。そういうのも全部、小さい頃から話してましたね。
yuzuka それでお父さんも、親身に返してくれるんですね。
柔美さん 親身ではないかもしれないけど(笑)ちゃんと授業みたいに答えてくれますね。だから悩み事とかも結構、全部話してましたね。
それから、何かショックなことが起きても、うちの家族は笑いに変えてくれるので。「3日たったらなんでも笑い話にする」っていう、うちの中のルールがあって。失恋した時とかも、二日目までは一人にしてあげて、三日目からはみんなでいじるんです。
家族同士の密な関わり
yuzuka それこそ思春期とかって、とくに女の子は「家族と関わりたくない!」みたいな時があるじゃないですか。私も二人兄弟だったんですけど、一人部屋が欲しいって、無理矢理一人部屋をゲットした覚えがあるんですけど、そういう、プライバシーが守られる空間がないのって、辛くなかったんですか?
都美さん 兄弟で合う合わないはあるんですけど、うまくやってましたね。周りの話を聞く感じと比べると、私達兄弟は普通よりも上下関係がしっかりしてて、仲も良かったので。いつも「仲良しだねえ」って言われてました。自分たちは普通のつもりでしたけど。
柔美さん 今でもみんなでグループラインをするのが楽しみで。時間が合えばみんなでも集まりますし。全員でってのは、なかなか難しくなっちゃいましたけどね……。
yuzuka じゃあ、兄弟間も仲良くお互いに距離が取れて、親子関係も良くて。言い方がおかしいかもしれないけれど、「みんなが思ってるよりも、普通の家庭だよ」っていう感覚ですよね。
都美さん 普通の家庭の人達が、「私達なら無理だわ」って思うのかもしれないけど、私達にとってはそれが当たり前で、楽しかったし、不満もなかったですね。
yuzuka 例えば、周囲の人だとか、有名なタレントさんが「ビッグダディの子育ては失敗だ」って言うことに対して、腹が立ったりはしないんですか?
都美さん 腹はたちませんね。そういう考えなんだな。その人はそう思うんだなって。だけど本当は、子育ての成功とか失敗って、子どもが決めることですよね。事実、私達は楽しかったし。それで良いかなって。
柔美さん 勿論、言われてショックだって気持ちはあります。失敗って言われちゃうと、私たちの生き方まで否定された気持ちになるから。
都美さん 人生を全部否定された気持ちにはなるよね。
柔美さん うん。でも、結果私達は楽しいし何の不満もないからね。
都美さん 何をもって「成功」「失敗」って言われるのかも分からないけれど、結果的に私達が今どうなっているっていうのを、子育てのせいにされたくないんです。それに、私達は失敗されたとか、この家が嫌だったとかは、全く思わないから。
柔美さん 何を見て失敗って思われるのかは分からないけど……。礼儀とかは、凄くルールが厳しかったので、例えばご飯の食べ方とか、敬語とか、何事も目上の人に先にしていただくとか。
そういうのはすごく身に付いていて、そのあたりも感謝していますね。だけどそれも、命令されてやっていたというよりは、自然とそうなって行った感じで。うちは年功序列が厳しいので、兄弟の間で上を見て、自然に真似していったんですよね。
yuzuka 寮生活を感じさせますね。
柔美さん そうそう!それだ!寮生活っぽいよね。私達、高校が寮だったんですけど、基本的なことが身に付いていたので、それで怒られるってこともなかったし、困ったこともなかったです。
都美さん 家では門限とかも本当に厳しくて、30秒でも過ぎると外出禁止になるので(笑)そういう約束事は、みんな徹底して守ってました。約束を守り合わないと、家族である意味もないから。
柔美さん そういうので、信用を積み上げていくって感覚なのかな。信用を失いたくないよねって。だから、徹底してましたね。
yuzuka じゃあ、今も「約束を守る」「嘘をつかない」ってのが人生の基本として、心にあるんですね。
柔美さん そうですね。信じてほしい人にはそれなりの筋は通しますね。基本的に友人も含めて、信じ合える関係でいたいので。だから人に嘘をつくとかは、考えられないです……。
兄弟間でも、未だにそれはあります。何事も相談しあって、嘘はつかない。なんでも相談しあうので、お金に困った時は、兄が仕送りをしてくれていました。私が高校生の時とかは、毎月お小遣いまでもらっていて。「自分が高校生の時に、遊ぶお金がほしかったし、お前たちには高校生活を楽しんでほしい」って。
それに対して、「お金はちゃんと返すよ」って言ったら、「俺に返すんじゃなくて、妹達にあげるんだよ」って。そうやって、恩を下の子たちに返していくんだよって。
都美さん だから私も、柔美からお小遣いをもらってましたね。上がしっかりしてて良かった(笑)
柔美さん そうやって兄弟間で恩を回してるんだよね。
yuzuka かっこよすぎる……。弟にお小遣いなんて、あげたことがない私には、耳が痛いです。
最後に
yuzuka それでは、ちょっとこれは、失礼になってしまうかもしれないんですけど。もしも生まれ変われて、人生を選べるとしたら。所謂「一般的な家庭」に生まれるか。それとも、また林下一家として、同じような環境に生まれるか。どっちを選びますか?
柔美さん 都美さん 今と同じというか、清志さんの子どもに生まれたいですね。
柔美さん 自分の子どもが生まれても、同じように育てたいって思います。できるかは分からないけど、同じような経験をさせてあげたい。本当に幸せだったから。
yuzuka この後、お父様とも対談させていただくのですが、だからこそこのインタビューがどういったものになるかで、記事の方向性が変わってくるなって、ずっと不安だったんです。「滅茶苦茶辛かったよ」って言われたらどうしようって……。だけど、良いお話がたくさん聞けて、良かったです。
柔美さん ありがとうございます。ところでお父さんとの対談、難しそうですね。お父さん、変わってるので(笑)
都美さん 変わってるっていうか、人と違うよね。天邪鬼。素直じゃない。
柔美さん かわいいよね(笑)だから、私達がこう言ってるって言っても、「そんな努力してない」とか言うと思うんですよね。そういう人なんで。
都美さん その取材、一緒に見たかったな。お父さん、大丈夫かな。
柔美さん ねー。お父さんにも、ちゃんと優しく受け答えするように、言っておきます。
yuzuka 最後まで仲睦まじい様子が伝わってきて、本当に安心しました。それに、先にお二人に会えて良かったです。子育てが正しいとか正しくないって、答えが出る問題ではないと思うんですけど、お二人が胸をはって「生まれ変わっても清志さんの子どもに生まれたい」って言えるって、それが全てだと思うんですよね。この気持ちを持って、お父様との対談に望みたいと思います。
「もしかして、滅茶苦茶なヤンキーが来るんじゃない?」なんていう私の心配を大きく裏切り、
お二人は、物腰が柔らかく、礼儀正しく、私の突っ込んだ質問にも、しっかり目を見て答えてくれました。
「普通」ってなんだよって、それにつきるんですけど。
彼女たちは、「普通」なんかよりも、遥かに素敵な女の子たちでした。
お二人を見て「子育て失敗」だと言う人がいるのなら、
毎日ツイッターで「おちんちん」なんて呟いている私は、どうなってしまうのか……。
なんて反省を抱えながらも、やっぱり、この批判の渦中にいたビッグダディ本人が、
どう考えているのかの疑問はまだ、溶けないままです。
「本人はどんな気持ちで子育てをしていたのか」
若干の不安と期待を胸に、私は、沖縄に飛びました。
yuzuka
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