恋愛

わたしのすきなひとはねこをかっている

2020年9月25日

ぼんやりした暗がりの中、頭をてっぺんに向けてぐいっと進展する。

そこには中途半端な量の雲と、グレーとブルーが混ざったような、どす黒い空間が浮かんでいた。

 

その日セックスした相手は5度目の相手で、

彼の家から帰るとき、私は律儀に使用済みのコンドームとティッシュペーパーの入ったローソンの袋を、持ち帰った。

 

今はそのローソンの袋を、ローソンのゴミ箱に捨てるところ。

どこまでも几帳面というか、変なところだけ、守ろうとするくせがある。

 

「かれし」みたいな存在は、5、6人。

そのうち「好き」を言い合う相手は、4人。

 

うち二人は多分私のことだけが大好きで、それ以外は私を含めた「女の子」が、好きな人だった。

 

帰り道には、公園がある。

大きくて緑色でふかふかしていて、平和で、良い公園だ。

 

きゃっという声と一緒に、小さな人間が、私にぶつかった。

どすん、と、わりとリアルな音がして、とっさに「ごめんなさい」といった。

 

ぶつかられたのに謝るなんて、なんだかへんだ。

だけど「なんだか」謝ってしまうから、おかしい。

 

「ごめんね」

小さな人間は最近習得したであろう言葉を私にむかって発した後、

すぐに背中を向けて、緑のふかふかの上を走り去っていった。

 

眩しかった。眩しすぎて直視できなかった。

幸せになりたかったはずなのにな、おかしいな、と、思った。

 

つい最近までは「ああいう未来」を普通に夢見ていて、夢見ていたらちゃんと叶うって、そう思っていたのに。

今ではどこまでも別世界で、どこまでも届かなくて、どこまでも幻だ。ああ、おかしいな。

 

「結婚」「すきなひと」「こども」「しあわせ」

当たり前のように並べる私よりかわいくないあの子が、あの人が、なんだか憎らしくなった。

 

だけど思うのは、たしかに思うのは。

なんだかんだ言って「女の子」として、消費期限付きの「好き」をちゃんと与えられる立場でありつづけることのできる

「セフレ」って立場も、悪くないなって、そんなことだった。

 

幸せに正解はない。

 

幸せだからって、苦しみや悩みや葛藤がないわけでもない。

私たちはそういう黒いものもちゃんと抱えながら、自分の思う心地よさを大切にしていけば良いって、そう思った。

 

yuzuka

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yuzuka

作家、コラムニスト。元精神科、美容整形外科の看護師で、風俗嬢の経験もある。実体験や、それで得た知識をもとに綴るtwitterやnoteが話題を呼び、多数メディアにコラムを寄稿したのち、peek a booを立ち上げる。ズボラで絵が下手。Twitterでは時々毒を吐き、ぷち炎上する。美人に弱い。

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