リボ払いの借金120万円を抱えている、YouTuber兼ブロガーのピピピピピです。
僕は幼いころから、すこぶる豆腐メンタルだ。言い換えるならば、『自意識過剰』という奴である。
芸能人気取りで、美容皮膚科、加圧トレーニング、エステなどに通いつめ、『特別な存在』になろうともがいてきた。
思い通りにならないと、心と体と部屋が壊れてゆくほどであった。
F欄大学から除籍処分され、好きな子にフラれまくり、ストレス性の大量ニキビに悩まされ、自暴自棄になった黒歴史な1枚。
卒業アルバム、保険証、年賀状などを、憎しみたっぷりに切り刻んでばらまいた。
赤塗りの理由は、個人情報の保護、それからダンベルをガラスに叩き付けた際にケガをして、ちょっとばかし血が飛び散ったゆえだ。
こちらは足の踏み場もないというよりか、侵入すら困難といえるような、若かりし時代の部屋である。
後日談になるが、天井裏の配管が壊れたことで部屋中が水浸しとなり、汚水の滴るゴミのプールへとなり果てた。下水道で絶命するドブネズミの気分であった。
それで運良く、不動産がゴミの処分費+10万円ほどの弁償費を振り込んでくれて事なきを得た。
そんなこんなで、僕の心はいつだって慌ただしかった。
醜形恐怖症、視線恐怖症、不眠症、ナルコレプシーといった名だたる諸症状に襲われ、どこまでも逃げるように生きてきた。
極めつけは、自分の容姿に対するコンプレックスが常軌を逸しており、その改善に死に物狂いとなった。
親の仕送り、消費者金融の金を使い捨て、不健全で不道徳な自分磨きに走り出した。
昔の僕は、持ち前の神経質さによって、ストレス過多となり、肌は吹き出物だらけ、目は死んだ魚、体はリボ払い借金のようにぶくぶくと醜く膨らんでいった。
小学生時代。
まともに口を利かない子供だったゆえ、「悪魔の子」と気味悪がられ、イジメのターゲットにされた。
大学生時代。
入学式当日、ヤンキーに憧れていたせいで眉毛を全剃りしてしまった。
よく注目すると、肌のテカり、頬の荒れが見て取れる。
この辺から恐ろしいほどの速度で、顔全体に白ニキビ・黄ニキビ、赤ニキビ・シミ・くすみなどが頻出し始めた。
おそらく、あぶらとり紙の使い過ぎ、熱すぎるお湯での洗顔によって、強引に顔の皮脂を除去した結果、肌のバリア機能が最低レベルまで落ち込んだせいだと思われる。
誤った知識で美肌を志したことで、皮肉にも寒気がするほどの汚肌になったのだ。
家中の鏡を、割るか裏返すしかない日々が始まった。
洗えば洗うほど、顔のぶつぶつは悪化した。
気が狂わんばかりになり、家中の電源コードをまとめて枝切りばさみでちょん切ったら、バヂィィっっ! と火花が散って腰が抜けたこともある。
完全に自分を制御出来なくなり、自ずから爪先でニキビを引っ掻いたりと、あえて自分を地獄に突き落とすような真似をした。
「ちゃんとお風呂入ってる?」と同じ学部のリア充グループに指を差され、けたたましく大爆笑された。
自分の顔が大嫌いになり、太いフレームのメガネと、特大マスクを着用しなければ電車に乗れなくなってしまった。
凄まじい社会不安が牙を剥き、僕を引きこもりニートへと真っ逆さまに落っことした。
24歳。
自分でも気持ちが悪くなるほど、異常なる美意識に目覚めたことで、人と接するたび、「肌が超キレイ」と褒められるようになった。
取り組んだ美容法を列挙するなれば、ケミカルピーリング、フォトフェイシャル、フラッシュ光線療法、美容皮膚科通い、サプリメント(ビタミンC・D・E・コエンザイムQ10・イミダペプチド・プラセンタ・亜鉛)、ホットタオルで目を温めながらの瞑想、読書しながらの半身浴、加圧トレーニング、プロテインとアミノ酸を摂取しつつ筋トレ、紫外線対策をしながらのウォーキング、リンゴ・バナナ・キウイを毎日食べる、寝る前に食塩無添加のトマトジュース900mlを一気飲みなど。
登山をする際は、紫外線カットのハット、メガネ、マスクという装備で身を固めた。
まだまだ数え切れないほど実践したものはあるが、ざっとこんなところだ。
これらは美に対するナチュラルな情熱に起因するものではなかった。
ずっとずっと、容姿を小馬鹿にされてきたからこその復讐心からスタートする、狂気的な美しさへの渇望であった。
人生のすべてを美容に結びつけていた。
読書→6分でストレスが軽減されるという研究結果→肌に良い!
急がないで生きる→活性酸素が発生しにくい→肌に良い!
待ち時間は腹式呼吸→自律神経が安定して心が軽くなる→肌に良い!
こんな風にありとあらゆる行動に、美を創造するための意味付けをして暮らした。
「美肌の為なら死んでも良い」と本気で考え、消費者金融に手を出した。
容姿コンプレックスに突き動かされ、悪魔に魂を売り払った。
親とも一時的に縁切り状態になり、金もなくなって窓なしのゲストハウスへ入所せざるを得なくなったが、そこでもなけなしの金を使って大量の洗顔用タオルを購入するなどした。
そして最後には疲れ果て、「若くて肌に潤いがあるうちに死のう」と決意し、クレモナロープとぶら下がり健康器具を実際に注文した。
まさに過ぎたるは及ばざるがごとしであった。
28歳。
人生に嫌気が差して、頭の回路がひび割れたかのように暴飲暴食を繰り返した。
すると瞬く間に太って、身長165cmしかないチビなのに体重75kg、脂肪まみれで腹の突き出たぼんくらおじさんと化した。
あれだけギラギラに尖っていた美容意識は、欠片ほども見えなくなり、分かりやすい劣化の道を辿り始めたのである。
30歳。
リボ払い借金120万円でYouTuberという、経済的に不安定な現在の写真である。
もはや、シャンプーもリンスも洗顔剤もほぼ使わない、いわゆる湯シャン生活へと突入した。
数知れぬ絶望を踏み越えてきたゆえか、ストレスで激太りしたり、ニキビだらけになったりすることが皆無になった。
これが僕の、容姿と精神と日常のぐにゃぐにゃな移り変わりである。
やはり、『出来損ないの癖して完璧主義』という愚かな性格が災いをもたらしてきた。
冒頭でも記したとおり、クレイジーな『自意識過剰』が諸悪の根源なのだ。
僕が敬愛する芥川賞受賞作家・本谷有希子の、【腑抜けども、悲しみの愛を見せろ】という小説の中に、自分を『特別な存在』だと錯覚する女優志望の女が出てくる。
彼女が、普通以下の人間でしかないという現実を突きつけられ、狂い咲く場面があるのだが、まるで僕の心を切り取ったようで、とても切ない気持ちになる。
「唯一無二の存在。あたしじゃなければ駄目だと。あたし以外は意味がないと。あたしだけが必要だと。誰か。あたしのことを。あたしを。特別だと認めて。他と違うと。価値を見出して。あたしの。あたしだけの。あたしという存在の。あたしという人間の。意味を。価値を。理由を。必要性を。存在意義を。今すぐ。今すぐに。じゃないと。終わる。消滅する。どこにもいなくなる。p201より引用」
すべての言葉、すべてのセンテンスが、僕の胸に突き刺さる。
北海道生まれの僕は、東京暮らしに7回ほど失敗している。
芸能人になりたくてしつこく上京するものの、バイトすらままならず次から次に会社を飛び(バックレ)、財布の中身がすっからかんになるたび、実家に泣く泣く戻った。
人力舎の芸人養成所スクールJCAに入学したり、歌舞伎町のホストクラブで働いたり、小説家になろうとしたりと、典型的な痛い素人として生きてきた。
落ちこぼれのおっさんになった今でも、実は心のどこかに、「百万長者になるか死ぬかだ! 痛い奴だと見下されようが、昔みたいに笑い者にされようが、最終着地の場所が高次元でさえあれば、すべての評価をひっくり返せる。今まで僕を蔑んできた奴ら全員、3年後5年後覚えとけよ」という黒い闘争意欲みたいなものが、抑えきれないレベルであるのを感じている。
きっと僕の人生は、自意識過剰に始まり、自意識過剰に終わるのだろう。
もうここまで来ると、異常なるクズの自分を誇るしかない。
あの頃の、一線を越えた美への執念を、下克上精神に輪廻転生させる。
それだけが、リボ払い借金120万円の腑抜けから這い上がるための、唯一無二の方法だから。
ピピピピピ
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