恋愛

【漫画考察】NANAのタクミは、どうしてハチと結婚したのか

未知のウイルスによるパンデミックで暇を持て余している皆さんと、

NANAの話がしたい。NANA、 そう、あのNANAである。

 

私は今年29歳、アラサーだ。

この世代の人間が恋愛について話していると、度々こんな質問を投げかけたし、投げかけられた。

 

「ねえ、NANA読んでる?」

その言葉はまるで合言葉のようで、「読んでるよ」と言われればそこから2時間は話題が尽きないし、

反対に「読んでいないよ」と言われると、「あ、じゃあ気にしないで」と切り上げるしかなくなってしまう。

 

NANAのストーリーはあまりにも難しくて、登場人物全員に「事情」があってそれらが絡まった人間関係はすこぶる複雑なうえに、

登場人物の発する言葉ひとつにとっても、読んでいる人の価値観によってあまりにも捉え方が違うので、

読んでいない人とその場限りの話をするには、ちょっくら荷が重い漫画なのである。

 

例えば有名な例のシーン「わざとだよ?」を、知らない誰かに説明するだけで、私は多分1時間かかるし、

どのキャラクターが好き?って質問だけでも、「●●かな」「だよねー」なんて、そんなに簡単に会話が終わることはない。

 

それでいて読者の皆さんはご存知の通り、NANAは21巻まで刊行したのち、

作者の体調不良を理由に10年以上新刊が出ていないという事情もある。

 

魔の21巻は今までの全てが覆されるような、壊れてしまうような内容だった。

 

ジェットコースターの上まで登って、その先がないことに気づき、

「え!?死ぬしかなくない!?え、落ちるの?どうすんの!?」

みたいなところで更新がストップされている状態で、私たち読者もこの物語の結末は知らない。

 

そんな事情があるからこそ、「読んだことないや」って人に「NANAってどんな話なの?」と聞かれても、

なんだかうまく説明ができないわけである。

 

もう何度も、何度も読み返しているのに。大好きなのに。

しかも続編が出ていないから、安易に「良い漫画だから読んで見て」ってすすめづらかったりする背景もある。

 

だから今回はあえて「NANA」についての説明は省く。

 

あらすじがーとか、登場人物がーとか、私の拙い日本語で説明できる自信がないのだ、どうしても。

読んでいない人には本当に申し訳ないけれど、今日の記事はNANAを知っている人だけに向けて書こうと思う。

 

歳を重ねて大嫌いになったキャラクターとは!ネタバレを含む

ここから先はネタバレが含まれています。

この記事は、矢沢あいさんの描いた「NANA」という漫画を知っている方に向けて描いているので、

知らない人は読んでから来てください。

 

さて、コロナ騒動によって自宅で自粛せざるをえなくなった私は、

何年かぶりに、NANAの全巻を読み返した。

 

私は中学生の頃から何周も何周もこの漫画を読み返しているのだが、

29歳になった今読み返すと、十数年前と現在で全く同じ漫画なのにも関わらず、

自分の感じ方が180度違って驚いた。

 

憧れていたキャラクターの言葉が寒く感じたり、

苦手だったキャラクターがお気に入りに変わったり。

 

その中でも「好き」から「大嫌い」に変わったのが、小松奈々、通称ハチ。

彼女だった。

 

私がNANAを初めて読んだ15歳の頃。

まだまだケツの青かった私は、このハチの言葉や行動に、心底共感した。

 

分かるよ…ハチ。辛いよね、ハチ。強くなったね、ハチ。

ハチって本当に可愛い!

 

その頃からネットでは検索バーに「NANA」と打ち込めば「ハチ 嫌い」が検索予測に出るほどに嫌われていたし、

映画化された時には一作目でハチを演じて好評だった宮崎あおいさんが、続編でまさかの降板。

 

その理由が「これ以上は変なイメージがつくから演じられない」だったというのを聞いただけでも、

この「ハチ」というキャラクターがいかに賛否が分かれる存在だったのかが想像に容易いが、当時の私には、その気持ちが全くもって理解できなかったことを覚えている。

 

だってあんなにほんわかと天真爛漫で、ファッションも可愛くて、恋に一生懸命で……。

若かった私には、全女の子の憧れにさえ思えた。

 

どうして彼女をそんな風に毛嫌いする人がいるんだろう……?

 

幸子やレイラの方がよっぽどウザくない?

なんて、そんな風に思っていたのだ。

 

だがしかし時が経ち、29歳の私が漫画をもう一度読み終わった後に湧いてきた感情はというと、

「ハチがひどい。」

それに尽きたのである。

 

あれだけ大好きで共感していたハチ。

だけど今の私にとっては、思わず「え?なんなのこの女。まじで無理」なんて口に出してしまうほどの

腹が経つ存在になってしまったのだ。

 

歳をとって生まれたこの嫌悪感の根本はなんなのか。

もちろんその理由の一つには、彼女の恋愛体質ではすまされない恋愛へのだらしない姿勢があるだろう。

 

なんといっても ハチはこの短い漫画の中で、

浅野さん(不倫)→章司→タクミ→ノブ→タクミ と、男を取っ替え引っ替えしまくった挙句、その途中で妊娠している。

(因みに実らなかったもののヤスにわずかな恋心を抱いているシーンもあったので、ヤスがその気になれば、ヤスともそういう関係になっていたと思う)

 

しかも何がやばいって、彼女の語る「恋」とか「愛」の芯のなさである。

彼女がいわゆる明るい系ビッチなら、きっと多く人が感じたであろうこのいらつきは生まれないのだと思う。

 

だけど実際には彼女は芯のない軽いメンヘラで悲劇のヒロイン体質。

相手の男とちょっとでもトラブルが起こると「この選択は間違っていた」と元彼を思い出して元サヤに戻りたいと考え、

これまたちょっとでも優しくされると「これが愛なんだ……。一生守り抜く……」と言い出したりもする。

 

少し前まではノブと裸で抱き合って「これが愛かな…」なんて幸せそうに笑っていたくせに、

その二巻先では唐突に「私本当はタクミが好きなの…」と泣き出すのだ。

 

もしも私がノブなら、「え、そこまで来たら逆に怖いって。あの幸せそうなセックスはなんやったん?」と、

思わずつっこんでしまうと思う。

 

ちなみにこの気持ちのぐらつきは、彼女が出産したあとも続いている。

しかも彼女のやっかいなところは、それらの騒動を身内の中で繰り広げるというところだ。

 

そのおかげで周囲はハチに散々引っ搔き回されて、元彼のノブは勢いで誘惑してきたAV女優とヤっちゃうし、

ナナは精神的に不安定になって、失踪する。

(それぞれに問題があるのはみなさんご存知の通りなので今回は触れない)

 

ちょっと話は逸れるが、私はゾンビ映画で「典型的な女の人」として描かれるキャラクターがとても苦手だ。

 

それは、彼女たちはそろって倫理的な話ができず、もうすぐゾンビが来る!みたいな危機的な状況の時に限って

恋人に私的な喧嘩をふっかけたり、今はちょっとおとなしくしていてよって時に叫んだり、

 

「そんなのに騙されちゃダメでしょ」って人に騙されてみんなを危険に晒したりするからなのだが、

彼女はちょっと、それに通ずるものがあると思う。

 

恋多き乙女、といえば聞こえは良いが、彼女がやっていることって、実はちょっとグロい。

 

さて、こうして書いてしまえば、

この記事は私の個人的なハチへの嫌悪感をただ認(したた)めただけの怪文書になってしまうのだが、

重要なのはここから。

 

そんな彼女を、あの男が結婚相手に選んだことにある。

「あの男」、そう、タクミ。

 

実は私に価値観が変わったなあと思わせたキャラクターの中の一人が、彼だったりする。

当時の私は、タクミが大嫌いだった。

 

冷酷で浮気者、嘘つきで無神経なナルシスト。

大好きなハチを傷つける最低な奴、しかもロン毛。(ロン毛が嫌いだった)

 

それが時間を経て読み返した今、ビジュアルが私好みでないことに変わらないにしろ、

「あれ?タクミ、思ってたよりまともじゃない?」

と、ちゃっかり一番お気に入りのキャラクターにまで昇格してしまった。

 

「yuzuka的NANAのお気に入りキャラクターランキング」の

ハチとタクミがぐるりと入れ替わったわけである。

 

改めて読み返してもタクミが浮気者なのには変わりがないが、

彼って、かなりやり手の仕事人間である。金もあるし、地位もあるし、名誉もある。

 

なによりハチの妊娠が発覚した時に逃げも隠れもせず、「じゃあ、結婚しよっか」と即決し、

不安がる彼女のために全てを手配し、引っ越し先もハチの希望に合わせて調達してくれるだけの実行力がある。

 

普段からハチを邪険に扱っているように思われがちだが、実は仕事が終わればちゃんと帰ってくるし、

作った料理は全部食べてくれるし、ハチのつまらない愚痴にも付き合うし、遠征に行くたびにハチの家族側のお土産までちゃんと買って帰ってきてくれる。

 

浮気もハチと結婚してからは徐々に減りつつあったわけだから、

売れっ子ミュージシャンにしては良い旦那を頑張っているのではないかしら、と思うわけである。

 

そんな彼だからこそ、タクミの周囲にはレイラを含めて美しい女性がたくさんいて、絶えずに誘惑されている。

きっとその中には本気でタクミを愛していた女性もいただろうし、ハチよりも美人だったり、ハチよりも家庭的だったり、何よりもハチよりも頭の良い女性だって、いたと思う。

 

そんな彼がわざわざ、グループ内で手をつけ回っているハチを結婚相手に選んだのは、

子供のような「独占欲」という部分はあるにしろ、なにか決定的な、彼女にしかない魅力があったとしか思えない。

 

そうして思い返すと、彼女はこれだけの行為で周囲を散々振り回しておきながら、

会う人誰もに好かれるという天性の才能を持っている。

 

ちなみに漫画の中で彼女は「絶世の美女」としては描かれていないから、その理由が容姿だけではないのは明らかだ。

 

じゃあ、なんだろう。と考えた時に、

彼女の周囲にいるキャラクター達がハチに絆される瞬間に描かれる描写というのが、共通していることに気づく。

 

それは、彼女の「笑顔」だ。

彼女がぱっと笑う時、それぞれ事情を持ったキャラクター達の固まった心がほどけるのだ。

タクミも、シンも、ナナも、ノブも。

 

それぞれが人には話せない、話すことを諦めて事情を抱えて、心に鍵をかけて生きているけれど、

そんなキャラクターたちが、彼女の笑顔によって、ふわっと、心を許してしまう。

 

「だってハチは、僕に何も求めないのに、優しくしてくれるじゃない。

それってなんだか愛を感じない?」

 

実際にハチは彼らのことが大好きで、自分のしたいように感情を放出しているだけなのであるが、

それが彼らのこりかたまった心に、ずきゅんとささるわけである。

 

どうしようもないことをしているし、どうしようもないくらいにバカだけど、

彼女には自己開示の才能がある。

 

嬉しい時に思いっきり笑い、怒りたい時に起こり、泣きたい時には大泣きする。

場所を選ばずに、それら感情の自己開示をぱっとやってのけるのだ。

 

それって実は私たちが一番と苦手としていることで、

それでいて、重要なことなのではないかと思う。

 

彼女の感情はくるくると変わり、泣いていたと思えばカラッと笑ったり、

怒っていたと思ったら、ばーっと泣き始めたりする。

 

言いたいことを全て言葉や態度で伝えるから、周囲はハチがどうしてほしいのかが分かる。

そして求められることを与えれば、ぱっと笑顔になるから、嬉しい。もっと与えたくなる。

 

私がかねてから伝えている「上機嫌で不機嫌になる」とか、

「女の子はわがままでいるべき」とか、そういう基本的なところは、彼女はしれっとやってのけているのだ。

 

どうしてハチと結婚したのか!それは...

さて、タイトルに戻る。

タクミはどうして、ハチと結婚したのか。

 

それはやっぱり、芸能界という感情を隠して騙しあう世界の中で生活している彼にとって

面倒臭いくらい正直に、でもかわいく、感情をぶつけてきてくれる彼女に、魅力を感じていたのではないかと思う。

 

それと同時にその魅力的な部分を自分以外にもさらりとやってのけることを知っているからこそ、

彼の言葉風に言えば、誰かに取られる前に、さっさと俺のものにしておきたかったのかもしれない。

 

小松菜奈。通称、ハチ。

 

苦手なキャラクターだとは言いつつ、10年以上経った今もなお

見習うべき魅力が満載な、素敵なキャラクターであることには違いない。

 

yuzuka

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yuzuka

作家、コラムニスト。元精神科、美容整形外科の看護師で、風俗嬢の経験もある。実体験や、それで得た知識をもとに綴るtwitterやnoteが話題を呼び、多数メディアにコラムを寄稿したのち、peek a booを立ち上げる。ズボラで絵が下手。Twitterでは時々毒を吐き、ぷち炎上する。美人に弱い。

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