料理 考え方

何気に言い出しづらかった「会食恐怖症」の話。私は会食が恐い

2020年10月18日

なにが食べたいかって聞かれて考えるのは、

食べているときの自分の姿だ。

 

泣いても笑っても怒ってもブスな私が

たべものをくちにはこぶなんて、

ただでさえ歪んでいる顔がさらに歪んでしまうから。

 

ドリアなら小さな口でいいかも。オムライスでもいい。

寿司はひとくちで食べきれなかったときに悲惨だし、

とんかつはご飯の正しい米粒のとりかたがわからない。

 

だから私はいつもこういった

「あんまりおなかへってないからさ」

 

わかってるんだ本当は。

 

男は「食いしん坊」が好きだ。

 

美人でなんでも食べて笑顔で喜んで

なおかつそれがお腹や顔に脂肪としてひっつかないような「女」が、あいつらは好きなんだ。

そんなことはずっと昔からわかっていたんだ。

 

じゃあ、醜くて、出されたご飯も食べられない私は?

そう考え始めると、楽しみにしているはずのデートが、苦痛になった。

 

私は「会食恐怖症」に長いこと苦しめられている

会食恐怖症を、ご存知だろうか。

端的に説明すれば、誰かと一緒に食事をすることに対して、強い不安感・緊張感を抱くというもので、

対人恐怖症の一種とされている。

 

「食べているところを見られたくない」

「こぼしてしまったら不潔だと思われる」

「食べ残してしまったらどうしよう」

「吐いてしまったらどうしよう」

 

など、それぞれが不安に思う項目は違うが、総じて強い不安感や緊張を感じ、人との会食場面に苦痛を感じる。

これがひどくなると、対人関係や仕事などの社会生活、日常生活にも支障が出る場合がある。

 

実は私、この「会食恐怖症」に、もう長いこと苦しめられている。

 

私は、本当に心を許している人の前でしか、美味しく食事をとることができない。

大人数で居酒屋に行った場合はほとんど手をつけないか、

どうしてもとよそわれたものだけを水で流し込む。

 

だけどいちいち説明してややこしい奴だと思われたくないから、

「yuzukaちゃんは何が食べたい?」と聞かれた時には、

いつも「枝豆さえあればビールが飲めるのでそれだけで最高です」と答えるようにしている。

 

枝豆はどこの居酒屋にもあるし、残していても誰かが勝手に食べてくれるから、最高の食べ物だ。

もちろん、会食というのは大勢で行くだけのものではない。

 

職業柄初対面で目上の方と食事に行かせていただく機会も多い。

相手がわざわざ予約してくださったお店で食事を残すことがどれだけの粗相かは私の中でも理解しているつもりだからこそ、

食事に行くと決まった日からは、楽しみよりも遥か大きく膨らむ「食べられないのにどうしよう」の気持ちと戦うことになる。

 

当日は朝からご飯を抜いて、極力お腹を空かせようと努力してみたり、

簡単に水で流し込めるもの(リゾットやスープ)だけを選んだり、

最悪は相手がお手洗いに立っている間に、スタッフに頼んで食事を少しずつ下げてもらうこともある。

 

はあ。書いていて嫌になるが、これってもう、最悪である。

だって大人になってから人と会う場面なんて、「ご飯行きましょう」以外ないんだもん。

 

大好きな人や尊敬している人とご飯を食べる。

この上ない贅沢なのに、分かっているのに、

目の前に食べ物がやってくると、吐き気でいっぱいになる。

 

どうにか口の中に突っ込んでも、全く味がしない。

しまいめには手がふるえてきたり、えずくことだってある。

 

「少食なんです」と笑ってごまかしても

「遠慮しないで食べなよ!」って更によそわれたり、

「いやいや、食べようとしないからでしょ。なんでも良いから食べなよ」と、怒られることもある。

 

だけど当本人が一番食べたくて、だいたいはお腹もぐーすか鳴っていて、

だけどどうしても吐き気がして食べられなくて、申し訳なくて、泣きたいのである。

 

実はこの症状が出たのは遥か昔高校に入学してすぐ、

初対面のみんなで弁当を食べるというのが苦痛すぎて、一口も喉を通らなかったのが始まりだ。

 

原因はわからない。

とくにトラウマとなる出来事もなかったように思う。

 

だけどその頃から、「初対面もしくは数回会っただけの相手と食事をする」ことへの恐怖が生まれたのだ。

とくに恋愛関係の構築には、かなり苦労してきたと思う。

 

仲を深めるためにあちこち予約してくれるのに、

どこに行ってもほとんど食事に手をつけられないだけではなく、

そのくせ体は糖分を欲して、低血糖になって倒れたりもする。

 

「お腹空いてないから」と言って食事を避けるくせ、一日の終わりには顔が真っ青になって、

お腹を鳴らしながらへたへたと座り込むわけだから、相手からするとややこしいったりゃありゃしない。

 

「だから食べろっていってんじゃん!」

「だって食べられないんだもん…」

 

相手からすると、全く理解ができないのであろう。

遠慮しているとか、好き嫌いが多いと捉えられることも多かった。

 

体は欲しているんだから嘘をつかずに食べろと怒鳴られたこともあるし、

実際にそうして、吐いたこともある。

 

「俺、好き嫌い多い子、苦手なんだよね」って、告ってもいないのにふられたことさえある。

偏食じゃない!むしろ好き嫌いはない!!!って、言い訳する気も失せたっけ。

 

じゃあ、ちゃんと説明すれば良いじゃんって、思うでしょ?

だけど、想像してみてよ。

 

「私は会食恐怖症で、食事をするのが苦痛です」なんて公にしたら

どれだけ周囲に気を使わせて、お誘いが来なくなると思う?

 

仮に一緒に食事に行ったとして、憧れている人と過ごす限られた時間の最初に

 

「どうして私が食べられないか」なんてやや暗めなストーリーを説明する時間にあてなきゃいけないの

どう考えたって地獄すぎるでしょう。

 

だから私は「お昼ご飯が遅くって、あんまりお腹空いてないんですけど、枝豆が食べたいです」と、

これからもそう説明し続けて、深夜家に帰ってウィダーインゼリーを4本一気飲みする生活を続けます。

 

会食恐怖症について書くのはずっとずっと控えていて、その理由はやっぱり

私を食事に誘ってくれる人たちがたくさんいるツイッターでこれを公表することに勇気が必要だったからだけど、

 

でも、私がこの記事をシェアすることで、

「なんだ、私だけじゃないんだ!」って気づいたり、

 

もしくは、「あ、俺の彼女って、だから食べられないんだ」って気づいたり、

そういうきっかけになれば良いかなって思って、思っていることを書きなぐった。

 

会食恐怖症に限らず、私の周りには摂食障害を持った友人も多いからこそ、

「食事」というデリケートな行為を苦手としたり、苦痛になる人が多いことを、知っている。

 

もしもあなたがそういう人に出会った時、もしくは、あなた自身にそのような問題が起こっている時は、

あまり深刻に捉えず、責めず、騒がず、常識に当てはめず「ま、そういう人もいるよねー」って、

軽くスルーしてほしいな、なんて思う。

 

だっていろんな人がいるんだから。

そういう人だっているでしょう。

 

自分なりに、付き合い方を考えていけば、大して恐れるものでもない。

 

ちなみに私はこの症状のせいで、最長3日間何も食べられないことがあったけれど、ちょっと倒れかけただけで普通に生きていますし、その3日間も楽しかったし、

食べられなくてもウィダーインゼリーさえ飲めばどうにかなることが多いから、あんまり気にせず、ゆるりと自分の人生の一部として、付き合っています。

 

なおさなきゃ!とか、どうしよう!とか、

考えたって仕方のないことの方が多いので、そんなに気負いせず、楽に捉えたら良いと思う。

 

Ps.私の場合は、何度も食事を重ねていくうちにそのうち自然と食べられるようになってくるので

これからも懲りずに、お食事のお誘いをお待ちしています。

 

yuzuka

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yuzuka

作家、コラムニスト。元精神科、美容整形外科の看護師で、風俗嬢の経験もある。実体験や、それで得た知識をもとに綴るtwitterやnoteが話題を呼び、多数メディアにコラムを寄稿したのち、peek a booを立ち上げる。ズボラで絵が下手。Twitterでは時々毒を吐き、ぷち炎上する。美人に弱い。

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