リボ払いの借金120万円を抱えている、YouTuber兼ブロガーのピピピピピです。
「輝いている人、一番ムカツク!」
僕の親友に、ブスに悩んで23年の田嶋(たじま)という卑屈な女子がいた。
「他人の笑顔を見ると寿命が縮む!」と真顔で言ってのけるほどであった。
それほど心をこじらせていた。
一重で目つきが鋭く、鼻は低くぺたんこで、どことなく攻撃的な見た目だった。
本人は、「みすぼらしいサメっていうかー、魚のなりかけ!」と自虐発言を繰り返していた。
結論から書くと、そんな田嶋は美容整形に踏み切って、「毎日楽しい!」とつぶやく幸せな人間に生まれ変わった。
鼻筋通ったにゃー!
お目々ぱっちりにゃー!
可愛いは正義なりにゃー!
手術が終わるたび、“猫ちゃん語尾”のメールをしこたま送りつけてきた。
そして彼女の影響でこの僕自身も、整形ではないにせよ、美肌治療――ケミカルピーリング、フォトフェイシャルもろもろに、総額50万円以上を投じた。
ずっと赤ら顔のニキビ肌で、女性恐怖症の非モテだった僕は、美容のおかげでちょっとばかし生まれ変わった。
田嶋ゴリ押しのケミカルピーリング、化粧水、美容液の3点セットによって、僕のやっかいな混合肌はみるみる改善していった。
自信がみなぎり、やる気がほとばしる。
とどのつまり、『肌質の改善』一点だけで、人生が一変したのである。
それを踏まえると、『整形』が人生に及ぼす影響は計り知れない。
田嶋は何かにつけて、「ドブスは自惚れることすらできねー!」とぶつくさ愚痴っていた。
『最低限の見た目』という才能がなければ、自惚れ、勘違いすることすら難しくなるという話だ。
自虐すると悲惨であると、胸を張れば傲慢であると悪い評価を下され、どうしようもなくなって卑屈になると、心の汚い人だと認定されてしまう始末。
ドブスの八方塞がりである。
かくのごとく容貌格差とは、資本主義の経済格差に匹敵――いやそれ以上に理不尽な事象なのである。
整形シンデレラ田嶋とは、東京某所・メールオペレーターの職場で出会った。
いわゆる、出会い系サイトのサクラである。
田嶋が、“猫ちゃん語尾”のメールを送ってきたのも、当時操っていた架空のぶりっ子を真似したのだ。
言うまでもなく後ろめたい職種のため、そこで働くアルバイターは変わり者揃いだった。
整形中毒、顔面入れ墨、前科持ち――
一般企業では滅多にお目に掛かれない存在のオンパレード。
当時の業界(かれこれ10年ほど前)は、休憩中も時給発生、音楽鑑賞OK、弁当支給ありなどが当たり前だった。
平均月給40万円は下らない。
そればかりか脱税し放題の空気がはびこっていた。
『赤信号みんなで渡れば怖くない』よろしく、誰も彼もが、税金を無視して散財していた。
楽して稼げるブラックなユートピアであった。
したがって、大規模な整形も、全身入れ墨も、フルタイムで半年くらい働けばさくっと果たせる環境下だった。
そんなグレーな空間の中で、僕と田嶋は二人っきりの深夜勤務をすることが多々あった。
担当サイト――部署が小さく、人手が足りないのにプラスして、僕らに準管理者のような権限が与えられていたからである。
『卑屈さ』で共鳴した関係。
あの頃の僕は、お店のレジに並ぶのすら苦痛なほどの赤面症かつニキビだらけの汚肌であった。
それのみか緊張すると意識が飛ぶナルコレプシーみたいな症状があって、一般社会から逃げる他なかった。
田嶋も田嶋で、「ブス属性のせいで希望職種、すべて門前払いされた! ブスの顔見て心まで汚いって決めつけてんじゃねぇーよクソブラック企業が! ブスだからって口説きの練習台として扱ってんじゃねーよクソみたいなブサイク男連中がよ!」と荒ぶっていた。
そして彼女は、駅にある高収入系の無料求人誌を開き、自傷的な意味で、風俗嬢になってしまおうかと本気で考えたとのことである。
それがたまたま、PCオペレーター、メールオペレーターという名称で「出会い系サイトのサクラ」が多数掲載しているものだったから、この会社へ流れ着いたという運びだ。
いわば、社会不適合者の島流しである。
この世界は、『正常な人間のみ』に開かれており、その枠外に転落した者は、静かに溺死の底へと沈んでゆく。
あのとき僕は、そんな寒気のする思いを抱いたものだ。
そんなこんなだから、僕と田嶋はうまいこと噛み合ったのである。
気付けば隣同士に座り、仕事を半ば放棄して、社会への不平不満をキャッチボールしていた。
160kmストレートの罵詈雑言をぶん投げ合った。
そして実際に文章化して、出会い系サイトにアクセスしてくる大勢のユーザーに向かって、一斉送信するなどした。
「ドブスとド貧乏は、劣等感の発生装置。そう思いませんか?」
「ドブスのあらゆる整形は保険適用されるべき。そう思いませんか?」
「眠り姫がドブスだったら、それはただの死骸。誰も口づけしてくれないから起きられない。そう思いませんか?」
疑問符の押し売りみたいになっているのは、お客の返信ポイントを削り、追加購入させるためである。
僕らのメールには、血みどろの怨念が含まれていたであろうことは間違いない。
一見、不健全な関係ではあるけれど、お互いの『心のヨゴレ』がなくなるまで、怒濤のごとく傷を舐め合ったゆえ、さわやかな気持ちになった。
それが功を奏し、僕は美肌治療、田嶋は美容整形へとズカズカ歩むきっかけを得られた。
類は友を呼ぶの関係上で、ひたすらに毒を吐き合ったからこそ、がむしゃらに突き進めたのだ。
負の感情、悪意も使いようである。
おそらく、下手な自己啓発書でも読んで、「ポジティブにならなきゃ! 前向きな発言しなきゃ!」という思考が強化されていたら、心は疲れ切り、人生は腐り果て、すべてが終わりを迎えただろう。
時には人間、『陰湿な自分を解き放つ』ことが、幸せに生き延びる上で重要な選択になってくる。
そう、深く思い知らされた。
そしてここから田嶋は、迷いをかなぐり捨て、美への道を駆け上がりはじめた。
「わたしはのっけからドブス。最悪、失敗してもドブスが引き続くだけ。怖いものなんてない!」
これは田嶋が、しつこいほどに唱えていた自己説得の言葉である。
はじめて顔面にメスを入れるプレッシャーを克服するべく、執拗に叫び散らしていた。
美容外科のカウンセリングに足繁く通っては、「埋没法」「目頭切開」「ダウンタイム」など、専門用語を交えて僕に演説してきた。
それが次第に、「腫れ どれくらい」「切開 何日休む」といった風に、手術後の体験談のあれこれを調べては、落ち着いて語るようになった。
田嶋の覚悟がひしひしと伝わってきた。
「違う惑星に降り立ったみたいに、顔が変わると日常風景も変わる!」
それはなぜか。
美容整形がありのままの自分を作るからだ。
一見矛盾した表現のようだが、ブスゆえに悩み、嘆き、縮こまって生きている限り、本来の自分を失っているということである。
すなわち整形とは、真の自分――噛み砕くと、自信を取り戻す手段になり得るわけだ。
そんな大事ことを、命懸けで自分を変えた田嶋から学ばせてもらった。
鼻筋通ったにゃー!
お目々ぱっちりにゃー!
可愛いは正義なりにゃー!
この一連のポップなメール文には、彼女の『涙と怒りと屈辱と執念と希望と夢』がぱんぱんに含まれているのだった――
ピピピピピ
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「真実の愛がほしい!」なんて、いつも叫んではみるけれど、
実際にはその相手欲しさに、偽りの自分で取り繕ってばっかり。
ぶりっ子に嘘、隠し事。
作り上げた偽物の自分は、実際評判も悪くはなくって。
それなりに恋愛には発展するんだけど、決して長くは続かない。続きはこちら
ピピピピピ
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