考え方

【前編】「黒人の子ども達が、警察官に撃ち殺されるんです。まるでおもちゃみたいに」歌手のAISHAさんが、人種差別について語る。《English translation》

2018年6月29日

yuzuka:ちょっと待ってください……。緊張が……。

AISHA:なんでなんでなんで〜(笑)全然大丈夫なのに〜!

yuzuka:音楽、いつも聞いています。メイクする時にはcandy loveを聞くのが日課なんですよね。会えて嬉しいです。

AISHA:OH,Thank you!私も会えて嬉しいです!

 

目次

雑誌を開いてみると、どのページも白人の女の子ばかりだった

yuzuka:今回は、すごくセンシティブな内容の取材なのにも関わらず、オファーを受けて頂き、ありがとうございます。

AISHA:ううん、とっても嬉しかったです。ありがとうございます。

 

yuzuka:今回インタビューのオファーをさせて頂いたのは、ツイッターの書き込みを見たことがきっかけです。

AISHA:ありがとうございます。私もいつもツイッター、見てます(笑)

yuzuka:いつも変なことばかり呟いてごめんなさい(笑)AISHAさんと相互フォローになってから、ずっと拝見させて頂いていました。私にとってAISHAさんって、まさしく太陽って感じで、いつも明るくてパワフルで笑顔を絶やさないってイメージがあったんですよね。ツイッターも、まさしくAISHAさんのツイッターだ!って感じで。明るくて楽しくて、いつもパワーをもらっています。

AISHA:わーありがとうございます。

 

yuzuka:だからこそ、たまに見かけるツイートに、すごくギャップを感じたんです。例えば「お父さんは白人ミュージック絶対禁止!って感じだった」という内容のツイート、それから、多くの黒人の方が映画に出られていることに感動したという内容のツイートですよね……。いつもネガティブな感情を一切表に出さないAISHAさんが、心を揺さぶられている様子が見てとれました。

これってもしかして、「人種差別」という話題に関して、AISHAさんが、幼少期の頃から深く感じているものがあったりとか、傷ついた経験があったとか……。そういう過去を抱えているからこそ、今、出てくる呟きなのかなって……。もしもそうだとしたら、そういうAISHAさんの内側の部分を言葉にすることで、もっともっと深く、AISHAさんのことを知ることができるんじゃないのかなって思ったんです。

AISHA:ありがとうございます。こういう話題って、日本の人は興味がないだろうなって思っていたので、オファーが来た時はすごく意外でした。だけど、嬉しいです。うーんと……。どこから話そうかなあ……。

 

yuzuka:例えば幼少期の頃って、何か違和感を感じる瞬間がありましたか?

AISHA:そうですね、ありました。電車を乗る時とか、どこかを歩いている時とか。どこにいたって何をしていたって、みんなに凄く注目されるんです。「なんで私だけこんなに見られるんだろう?」って。じーっと見られるけど、その意味が理解できなくて。「私って何か、変なところがあるのかな」って、凄く嫌だったんですよね。

yuzuka:視線ですね。

AISHA:それで、家に帰ってお母さんに、「ねぇ、どうしてAISHAはこんなに見られるの?」って、聞いたことがあったんですよ。そしたら、「あんたがすっごい美人だからだよ」って言ってくれて。

それで、その時は「だからかぁ」って、素直に納得したんですよね(笑)お母さんがポジティブでハッピーな人だから、そういう嫌なこともプラスに変換して伝えてくれていて。今考えたら、そういう意味で、私はすっごくラッキーな環境でした。

 

yuzuka:お母様がネガティブになることなく、明るい態度で接してくれていたことで、暗い気持ちに引き摺られることがなかった……。

AISHA:はい。だけど、もっと物心がついてきたときに雑誌を開いてみると、どのページにも白人の女の子ばかりが載っていることに気づきました。自分と同じ髪質や肌の色の子って、全然いないんですよね。やっと見つけてみても、ヘアは必ず人工的なストレート。私の頭から自然にはえてくるくるの髪の毛も、白人の子に寄せないとキレイだとは思われないんだって、ショックを受けました。

同時に、黒人の女性が唯一たくさん出ているのが、ミュージックビデオ。ほとんど何も身につけていないような下品な格好で、お尻を振っている黒人女性達……。そういうのばかりを目にするうちに、黒人女性が「SEXシンボル」としか、扱われていないことに気づいてしまって……。

それで、思っちゃったんですよね。「ああ、自分って綺麗じゃないんだろうな」とか「(世間的に)良いってされないんだろうな」って。

 

部屋中に白人のモデルのポスターや写真。部屋に閉じこもっていた時期。

yuzuka:ミュージックビデオで目にした映像。そこで初めて、肌の色を「コンプレックス」だと捉えるようになってしまったんでしょうか…?

AISHA:はい。すっごくコンプレックスに感じていましたね。部屋中に白人のモデルのポスターや写真を貼り付けまくって、閉じこもっていた時期もありました。

yuzuka:今のAISHAさんの姿からは想像できません……。でもただでさえ多感な時期に感じるコンプレックスって、苦しいですよね。

AISHA:そうなんです。それで、そんな私の姿を見ていた両親が「これはまずいぞ」って。ちゃんと話をする時間を設けてくれたんです。「AISHAにはAISHAの良いところがあるんだよ」「AISHAのお爺ちゃんやお婆ちゃんだって、素敵でしょ?」って。

それで、納得しようって思うんですけど……。

 

yuzuka:難しかった……ですか。

AISHA:はい。例えば映画。タイタニックを始めとする、私が憧れる有名な映画のヒロインは、必ず白人でした。

「ああ、こういう子が幸せになるんだ」「こういう子が求められるんだ」って、外部情報から、インプットされちゃってるから……。それを崩すのって、大変ですよね。

yuzuka:ふっと外を見た時に入ってくる情報に、矛盾を感じてしまうんですね……。ご自身の中で感じる以外に、周囲の方から直接何かを言われたことって、ありますか?

AISHA:うーん。私自身が明るい性格だったので、直接言われるってのは、あんまりなかったように思います。だけど、すっごく嫌な目つきで見られるとか……。

あとは、黒人の人に向かって、他の人種の人が使う差別用語に「Nigger(ニガー)」ってものがあるんですね。

それって、説明できないくらい、本当にタブーな言葉なんですけど、初めて会う白人の人に、凄い目つきで見られながら「Nice to meet you.Are you Nigger?」って言われたり。「まさか貴女って『アレ』なの?」みたいな凄く嫌なニュアンスですよね。その時は、この時代になってもそんなことを言ってくる人がいるの?って、びっくりすると同時に、悲しい気持ちになりました。

 

yuzuka:そんなことがあったんですね……。これは、私が無知だということもあるんですが……。私達って凄く閉鎖的な日本という国に生きてきていて、あんまり「差別」ってのを身近に感じていない気がするんです。それは黒人の方、白人の方。というのもそうですし、自分たちが「黄色人種」として差別を受ける機会も、国内にいる限りは、そこまでありません。

でも、ちょっと世界に目を向けてみると、例えばサッカー。私、あるチームのサポーターだったんですけど、そういうところで、私達日本人に向かって猿のモノマネをしたり、バナナを見せつけてきて退場させられるとか……。そういう場面を目にすることがあって。

ああ、今の時代にも、確かに「差別」ってのが存在するんだって感じたりして。

AISHA:そうですよね。世界に出てみると、強く感じると思います。

バービー人形ってありますよね?私、バービー人形が大好きなんですね。昔は黒い肌のバービーちゃん自体がありませんでしたが、今はあちこちに販売されています。

だけど、白人のバービーちゃんより、安売りされているんですよ。半額!とかって。未だにそれを見ると「ああ、私は価値が低いんだ」って、思っちゃう瞬間があります。

【引用:AISHA(アイシャ)『Candy love』MV youtubeより】

yuzuka:言われてみれば、昔は白人の女の子をモデルにしたお人形ばかりでしたね。今は多様性が認められているような気がしていました。でもそれは、表向きのことなんですね……。

AISHA:そうなんです。例えば最近見たドキュメンタリーで、孤児院の子どもを扱ったものがあったんですね。

たくさんの子どもたちがインタビューされていて、その子どもたちは、様々な肌の色の子が、バラバラにエントリーされるんです。

そんな子どもたち全員に、白人の人形と、黒人の人形を見せて、「どっちが良い子?」って質問したら、ほとんど全員が白人の人形を選んで、「どっちが悪い子?」って聞かれると、また全員が、黒人の人形を選ぶんです。

《引用:White Doll, Black Doll. Which one is the nice doll? youtubeより》

AISHA:そこからも分かるように、何が理由っていうよりも、本当に小さい頃から、雑誌やテレビ、映画、おもちゃ……。そういう情報で、間違った情報が無意識にインプットされていってんだなって思います。それってとっても怖いし、そのドキュメンタリーを見て、今でも差別意識は根深いんだなって感じました。

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yuzuka

作家、コラムニスト。元精神科、美容整形外科の看護師で、風俗嬢の経験もある。実体験や、それで得た知識をもとに綴るtwitterやnoteが話題を呼び、多数メディアにコラムを寄稿したのち、peek a booを立ち上げる。ズボラで絵が下手。Twitterでは時々毒を吐き、ぷち炎上する。美人に弱い。

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