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愛されたいけど、愛されたくない。

愛されたいけど、愛されたくない。

まただと思った。

愛される感覚に陥ると、私は途端に怖くなる。

純粋そうな瞳や、心底好意をよせていそうな微妙な距離や。

一生懸命選んでくれる言葉のひとつひとつに、恐怖を覚えるのだ。

 

「優しいものはとても怖いから 泣いてしまう あなたは優しいから」

 

鬼束ちひろが歌った通りだ。

優しさは怖い。愛されることは怖い。

だって私なんかに優しくする意味が、私なんかを愛する意味が、分からないから。

 

「私なんかを好きになるわけがない」という疑いと、

「私なんかを好きにならないで」という願いが、切実に交差する。

 

私の世界は、恋愛は、決して綺麗なんかではないから。

この色に大切な人を巻き込むなんて、絶対にごめんだったのだ。

幸せになることを拒むようになったのは、いつからだろう。

愛され、尽くされ、褒められていくうち、ある時急に、破壊衝動に襲われる。

 

こんな幸せがつづくわけがない。

こんな幸せなんて、おかしい。

 

 

心の奥が沸騰し、メラメラと熱い蒸気になった衝動は、

やがて私の心を乗っ取ってしまう。

幸せをめちゃくちゃに丸め込んで、凍らせて、地面に叩きつけたくなるのだ。

「どうせ終わるくせに、期待させないで」と怒りまで覚えて、

今の状況に耐えられなくなって。

幸せは怖かった。失った時のことを考えると、寒気がした。

だから、それならいっそう、自分で壊してしまいたい。

そうやって関係を破綻させたことが、何度も何度もあった。

自分で壊したくせに、「やっぱり壊れた」と滅茶苦茶になったその関係を見つめて絶望しながら、

同時に少しだけ、安心する。

 

「ほら、幸せになれるわけないじゃん」

「私の思ったとおりだわ」って、そうやって不思議な安堵を覚えるのだ。

 

抱きしめられたり、キスをされながら。

幸せの足音が聞こえてくるたびにそうしてしまうのは、

相手のことが、どうでも良いからなんかじゃない。

むしろ、私がそうしてしまうのは、きっと、きっと。その相手が、心から大切だから。

 

あなたは素敵だから、こんな奴を好きになるのは、何かの間違いだよ。

あなたのことを愛しているから、こんな奴とは関わるべきじゃないんだよ。

 

大事な人に出会うたび、大嫌いな「わたし」と関わってほしくないと、無意識に仲を引き裂こうとする。

そういう存在が、いつのまにか私の心を操作するようになっていた。

 

そして多分、その存在ってのは、「もうひとりの自分」ってやつ。

「もうひとりの自分」がいつ生まれたのか。

 

それはきっと人によって違うけど、だけどきっとその子は、

泣きながら、苦しみながら、そうやって悲しい行為を続けてる。

 

幸せになりそうな「わたし」を引っ張って、

「目を覚ましなよ。あなたなんて愛されるわけがないんだよ」って吹き込んだり、

今まであった嫌な思い出をスライドショーにしてみて、前に進むことを、尻込みさせたりする。

 

いつのまにか悲しくなった「わたし」は、また、幸せを諦める。

「そうだよね。幸せになんてなれないよね」って。

いつものように、悲しく笑うのだ。

「もうひとりの自分」は、きっと悪くない。

苦しみや悲しみを1人で抱えて、いつもは「わたし」の心の奥底で、蹲っているのだろう。

 

「もう無理だよ」と泣いても届かない。

「限界だよ」って言っても、聞いてもらえない。

「わたし」は傷ついても大丈夫と笑い、苦しくても涙を溜め込んで。

そういうドウシヨウモナサを、全部、「もうひとりの自分」に

押し付けてきたのだ。

 

すっかり我慢に疲れたもうひとりの自分は、時々暴れだしてしまう。

「私のことを大事にできないくせに、誰かに愛されるわけがないでしょう」

 

 

恋愛を成功させるのに、「相手をどう大切にするか」って考えることって、実はあんまり意味がなかったりする。

もっともっと大切なのは、まずは心の中にいる、もう一人の自分を、愛してあげること。

自分自身を愛せない限り、貴女のことを愛してくれる人のことを信じたり、大切に思えることは、ない。

 

自分自身を愛することができて初めて、

そんな自分にとって「大事な人」である自分のことを大事にしてくれる誰かのことを、

愛おしく思ったり、大切に思ったりが、できるのだ。

 

 

実をいうとさ、どうすれば自分を愛せるのか、私にもまだ、わからない。

だけど幸せになれるとしたら、いつか幸せになることを、

自分自身が許せる時がくるとしたら。

 

「もうひとりの自分」から目をそらさず、ちゃんと、「わたし」として

抱きしめてあげられた時だと思う。

 

心の中にいる、「もうひとりの自分」に気づく。

本当は一番、大切なことなのかもしれないね。

yuzuka

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yuzuka

編集長。元精神科、美容整形外科の看護師で、風俗嬢の経験もある。実体験や、それで得た知識をもとに綴るtwitterやnoteが話題を呼び、多数メディアにコラムを寄稿したのち、peek a booを立ち上げる。ズボラで絵が下手。Twitterでは時々毒を吐き、ぷち炎上する。美人に弱い。

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