ベルリンときめけどひとり3

考え方

歳をとるって、こわいことなんかじゃないはず

生きるのがそんなにうまくないへなちょこ人間によるあんまり参考にはならないベルリン暮らしのひとりごと日記。

生活に正解があるのかなんてわからないけど、不器用な日々のなかに思うあれこれをぶつぶつと綴ります。

 

今日は私にとってとても大きなテーマである「歳を重ねること」についてです。

前回の記事はこちら:泣いてもしょうがないなんて言わずに泣かせてよ

 

目次

歳をとるって、こわいことなんかじゃないはず

コロナ感染拡大によるロックダウンに突入するまで、私はフォルクスホッホシューレ(VHS)という、いろんな授業を格安で受けられる市民学校に通っていました。

英語で読み物をしようという内容の講座です。

 

英語のリーディング能力と語彙力を上げることを目的としたクラスだったので、若年〜中年世代のほとんどが英語で闊達に話せるベルリン、初日に教室に行ってみるとクラスメイトのほとんどが祖父母と同年代の人たちだったんです。

 

クラスメイトはシルバー世代

教室に入った瞬間こそ驚いたものの、彼らはとても優しくて、私にもフランクに接してくれました。

年齢だけじゃなく、ドイツ語ができないのもアジア人なのも私一人で、異質極まりない存在だったはずなんですが、週1回のクラスに3ヶ月間ほど通っていて、そう感じさせられたことは一度もありません。

 

授業時間以外も積極的に英語で会話しようとしてくれて、珍しいお菓子を「あなたもどう?」とわけてくれたり、教材に日本の話題が登場すると笑っちゃうほどみんな一斉に満面の笑顔を向けてくれたり。

クリスマスが近づくと、授業を一回スキップしてお茶やお菓子を持ち寄っておしゃべりやゲームをするパーティーを開いて、学期の終わりには一緒に先生にお花をプレゼントしました。

 

人生を一本の道として考えた時、歩んできた距離がだいぶん違うのに関わらず、区別せず対等に接してもらえたことがとても嬉しかったです。

 

「年相応」って言葉がこわかった

私がベルリンに引っ越した大きな理由のひとつには、「このまま生きていくと詰みそう」という漠然とした不安があったのですが、ぼんやりしたその不安を噛み砕いて言葉にしてみると、歳を重ねることとの折り合いがつけられていないということだったんですよね。

 

たとえば、友達との会話やメディアから受け取る情報の中のそこかしこに、

 

「もういい歳だし」、「年相応にしなきゃ」

 

とか、

 

「BBA」、「若づくり」、「劣化」

 

なんて、年齢で人を縛る言葉が溢れていて、そしてそれに慣れてしまっている自分に危機感を覚えていました。

 

自分でもふとした瞬間「この歳でこんなことしているのってありなの?」とか、「この服装って私の年齢的にはNGなのかな?」と、年齢を消極的な姿勢の理由にしてしまっていると感じることもあって、歳を重ねることを知らないうちにマイナスなものにしてしまってるのって深刻な問題だな、と感じていたんです。

 

だって、100歳まで生きる人だっている世の中で、たかだか30歳かそこら超えたくらいで、「もう若くない」とか言い始めてたら、(幸運であれば)何十年と続くその先の人生どんなモチベーションで生きていけばいいの?

「もう若くない」人の一番輝いてる瞬間はすでに終わってしまってるってことなの?

 

そんなんじゃ歳を重ねるごとにしんどくなることはあっても、ますます楽しくなるなんてことはまずないじゃないかよ……。

 

それがかねてからの私の不安であり、そして疑問でした。

 

青春に年齢は関係ないよね

私のクラスメイトは私より英語の上達が早かったし、椅子をガターンとさせて「それ知ってる!」と身をのり出すライナスの横顔はどう見ても輝いていました。

銀髪がかっこよくてジュリエット・ビノシュにそっくりなザラが英語を勉強している理由は、息子さんのパートナーがイギリス人で、3人で会話する時にもっと自分の意見を話したいから。

いつも孫の面倒をみるのに忙しいと愚痴っていたハンナは、英語が得意じゃなかったけど、googleマップを駆使して富士山に登ったことがあるということを教えてくれました。

 

人生の大先輩とクラスメイトになって、私の不安はかたちを変えました。

歳を重ねることの捉え方は、ほんのちょっとずつですが改められつつある気がしています。

 

振り返ってみると、ベルリンという街に暮らして1年以上経ちますが、その間私は人から年齢を尋ねられたことがほとんどといっていいほどないんです。

何度目かに会った時に、話の流れでお互い歳を聞きあうことが時々あったくらい。

 

敬語文化がないのも一因かなと思いますが、そういう時も年齢を知ったとたんに接し方が変わるようなことはなくて、リアクションもだいたい「ふーん、そうなんだ」くらいの感じです。

おそらく内心「歳の割にしっかりしてへん子やな」と思った人は多いと思いますが、少なくともそういう、印象と実年齢のギャップへの驚きを口に出す人には会ったことがありません。

 

私はこの場所では、日本にいる時よりもさらにできることが少ないので、本来なら一人前どころか熟成トロトロ肉状態であるはずの人間ですが、幼稚園児みたいに扱われることも少なくないくらいです。

 

年齢ってつまりなんなのよ

うん。

私は年齢ってつまり樹齢と同じようなものであるはずと思うんです。

 

苗木の頃からぐんぐん伸びて、すぐに実りをもたらすかもしれないし、何年経っても実も葉っぱもつけないかもしれない。

それぞれの木にそれぞれの個性があって、成長のタイミング、葉の茂り方や枝の伸ばし方も違って当たり前。

 

どんな実をつけてどんな花を咲かせるのか、それともずっと葉っぱだけなのか、枝が多いのか、天高く育つのか、空を覆うように繁るのか、それは全部木によって違います。

永遠に花も実もつけない代わりにおもしろいかたちに伸びるかもしれないし、小さくて弱々しいけどいい香りがするようになるのかもしれない。

 

年輪を重ねた大樹にリスペクトはあっても、若木と比べて「青春終わったね」なんて哀れんだりはしません。

家具職人だったりログハウスでも作ろうとしているんじゃなければ、そもそも樹齢を気にすることなんてそうないし。

 

ドイツの市民学校といろんな植物

 

きっと人間も同じなんじゃないでしょうか。

身体が成長する時期や、老化現象が始まる平均的な年齢は確かにあるけど、何をするか、どんな装いをするか、どんな考え方をするか、話す内容や振る舞い方なんかを、無理して年齢の「一般的」な基準にあわせる必要はないんじゃないかなと思います。

 

まあ、「年相応」の暮らしや扱いにこだわったり、「この年になってもう恥はかきたくない」なんて思ってたりしたら、恥だらけどころか恥に埋まってるこんな生活、そもそもできたもんじゃないんですけどね……。

 

私の実りの季節はたぶんまだ来てない。

さーて、いつ頃になるのかな。

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サマー

ライター/編集者 ベルリン在住。フリーランスでいろいろ書いています。ときどきイラストも。フェミニスト、動物好き、HSP気質。お仕事のご相談歓迎です。

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