考え方

Netflix「バード・ボックス」の観ない観光に行ったら病んだ【PR】

視覚、味覚、嗅覚、聴覚、触覚。

いわずと知れた人間の五感。

 

「何を失うと、一番辛い?」

なんて質問を、小学生くらいの時に投げかけられた気がする。

ひとしきり悩む私。

 

好きな人の声が聞こえないのは辛い。

好きな人に触れても何も感じないのは苦しい。

好きな人の匂いが嗅げなかったり、好きな人と食事をして味が分からないのも虚しい。

 

だけど一番悲しいのは、好きな人、そしてその人と見る景色が見られないことではないか。

 

「視覚かなあ」

  

目次

陽気な5歳さんに、妖気なイベントに誘われる

「観ない観光、来ませんか?」

5歳さんからそんな誘いが届いたのは、クリスマスムードが漂う12月のこと。

 

「観ない観光、ですか」

 

いつも変わった企画に挑戦しているライターさんという認識があった5歳さんからの誘いだ。

 

また何か企んでいる……しかも変態チックだ怖い……。なんて恐怖心を覚えながらも、

「目隠しをして美味しいランチとかを食べる企画です」という大雑把な説明を信じ込んだ私は、「行きます!」と、ふたつ返事でその祭りに乗ることを決めた。

 

配られるアイマスクと、渋谷スクランブル交差点

当日、都内某所の待ち合わせ場所にいたのは、Netflixと書かれたパーカーを着た大勢のスタッフ達。

そして名だたるエンフルエンサーの皆さんと、やたらと陽気な5歳さん。

わいわいと自己紹介が始まる中、手渡されたのは、アイマスクだった。

 

「アイマスク?」

「観ない観光なので」

 

都内某所なんて書いておきながら早速場所を書いちゃうと、そこは渋谷のど真ん中だった。

 

いくら緊縛が好きな私だからって、渋谷で真昼間っから……

っていうかどうして私の性癖を知ってるの?

なんて思いながらアイマスクを受け取ったところから、「観ない観光」が、始まった。

 

渋谷で目隠しをされたみんな

 

細かい説明はみんなが書いてくれているから置いておくとして、私はこの「観ない」いや、「見えない」ことについて感じたことを、たくさん、書き記しておきたいなって思ってる。

5歳の兄さん、はしゃいでるけどどんな記事書くんだろうって思ってたら、美女に囲まれてはしゃいでる想像通りの記事でワロタ

  

さて、とはいえちょっと説明。

この「観ない観光」の大まかな内容は、こんな感じ。 

ツアー開催概要映画『バード・ボックス』は、突然訪れた人類滅亡の危機を乗り切るために、主人公たちが「目隠しをして」生き延びていく物語です。本バスツアー「観ない観光」では、皆さまがよく知る東京を「目隠しをして」観光していただくことで、映画の主人公たちのように新しい感覚で日常と向き合っていただきます。

 

  • 渋谷スクランブル交差点で、目隠しをして立ち尽くして見る
  • 目張りされたバスに乗って、この日のために用意された「観ないレストラン」に出向く
  • 目隠しされた状態で、フルコースと称されたランチをいただく。(野菜スティックと、スピーカーでお肉を焼く音だけを聞かされて「焼きたてだ」と嘘をついて出される冷たいお肉、甘いキャラメルの香りのついた紙を嗅ぎながら脳内で味の変化を楽しみながら飲む、普通のコーヒー、パン)
  • 目隠しされた状態で、様々なものがぶらさがったり、いろんな音に溢れた迷路を、スタッフの袖を掴みながら進んでいく

  

何がなんだかわからないと思うけど、わからなくて良い。

とにかく「視覚をシャットダウンしたらどうなるか」ってところを感じるのが、この観光の目的だ。

 

というのもこの観光、もちろんただの観光ではない。

Netflixで配信されているオリジナル映画「バード・ボックス」のPRのために用意された、特別観光プランだったのである。

謎の闇に突き動かされた者たちが相次々と命を絶ち、人口が激減して5年。ここまで生き延びてきた母親が2人の子供を連れて、安住の地を目指す危険な旅に出る。 

Netflix 「バード・ボックス」公式サイトより引用

予告だけですでに「おもしろそう……」と唸ってしまう作品。

しかもNetflixオリジナル?

しかもサンドラ・ブロック主演?Netflixどれだけお金を握ってるんだよ……

と、興味しかそそられないこの映画の中でキーとなるのが「見たら死ぬ」というテーマである。

 

今までにも何度となく「音を立てたら死ぬ」とか「見つかったら死ぬ」とか、「◯◯したら死ぬ」系のホラー映画を見て来てはいたが、「見たら死ぬ」即ち、視覚を奪われなくてはならない状態での共同生活、サバイバル生活というのは、想像したことがなかった。

 

「人間の五感、何を失うと、一番辛い?」

「視覚かなあ」

 

「見えない」という状況が人間関係やサバイバルに招く影響には、何があるのだろう。

もちろん「見えないから危険」という基本的なことは想像ができるとして、視覚が奪われた状態で得る情報の取捨選択には、どんな感情がついてまわるのだろう、と、おぼろげに考えていた。

 

ほら、あの大人気ホラーのウォーキング・デッドだってそうだ。

訳のわからないモンスターや、得体のしれないゾンビに溢れた町でサバイバルを強いられた時、

実は一番怖いのが「人間」だ。そして大切なのは、誰を信じ、誰を見切るかという、咄嗟の判断である。

 

ただでさえ極限状態の中、人の心は訳も分からないほどに鋭く研ぎ澄まされている。 

寒い雪山でようやく見つけた山小屋。やっと火がついた焚き火。

安堵する間も無く叩かれるドア。

 

「開けてください!このままだと死んでしまいます!」

スコープを覗くと、そこにはか弱い女性の姿がある。

 

武器を持っているかもしれない。美人局かも。いや、姿形を変えたエイリアンか?

だけどもしかして本当に、「か弱い女性」なのかもしれない。

 

身の危険を覚悟してでもドアを開けるべきか。それとも無視して、拒絶すべきか。

「こいつを信じて良いのか?」

「とんでもない状況」に置かれた時、私たちは、限りある人間の感覚、すなわち「五感」をフル活用しながら、即座に相手を判断しなくてはならないのだ。

 

そんな状況下で「視覚」を失ったとしたら。

私達は相手からどんな情報を得て、何を信じるのだろう。

  

目隠しをされると敏感になるというのは定説だけど

目隠しをされた時(どんな時かは聞かないで)、よく言われるセリフがある。

「見えなかったら、余計に敏感に感じるでしょう?」

  

たしかに、目隠しをされた状態で耳元で囁かれればいつもよりも頭がクラクラしたし、

頰を触られるだけでびっくりするくらい、触覚も過敏になっている気がする。

 

「見えないからこそ、大事な情報を受け取りやすいのではないか」 

観ない観光というテーマの中で私が立てた仮説は、それだった。

  

打ち砕かれた仮説と、人間のココロの変化

さて、実際に目隠しをされた状態でツアーを巡って感じた気持ちは、どんなものだったか。

ひとことで言えば、「何も信じられない」である。

 

確かに味覚は敏感になった。触覚も敏感になったから、「観ないレストラン」で野菜スティックを手にとれば、

野菜ひとつひとつの手触りを、いつもより繊細に感じられた。

 

「それは芋ですよ」 

耳元でシェフに囁かれて聴覚で情報を得て、自分でも野菜を手に取って触覚で感じ、

鼻まで持っていって「じゃがいも」の匂いを嗅覚で認識した。

 

「こわい……

 

たしかに「芋」だと、自分の感覚がそう言っているのに、

視覚以外の情報を得れば得るほど、その情報が正しいのか、曖昧に思えてくる。

 

どうにか口に運んでそれが確かに「芋」だと味覚で確認しても、どうしても疑いが拭えない。

 

「本当に芋……?嘘なんじゃないだろうか……

 

自分が思う「芋」の情報さえ、疑わしくなってくる。芋って、こんな感じだっけ……

 

「観ないレストラン」で目隠しをされて食事するみんな

 

スクランブル交差点で視覚を閉ざして聴覚を研ぎ澄ませて見ても、

いつもよりもスクランブル交差点の「音」を理解できることはなかった。

 

視覚を奪われて食事をしても、いつもよりも野菜の味に感動したりもしなかった。

 

常に心にあるのは「これは正しい情報か?」という疑い。そして、恐怖だ。

たしかに視覚を遮れば他の感覚は研ぎ澄まされる。

きっとこのまま生活すれば、他の感覚が視覚を補うように発達していくのかもしれない。

 

それでも失われた「視覚」と、それに応じて過敏になった他の感覚が、かえって自分自身を信じる力さえもチグハグにさせて、たかが「観光」なのに、私の心を疑心感でいっぱいに満たした。

 

きっとこれは「とんでもない状況」におかれたら、もっともっと著明になるだろう。

「見えない」中で、何を感じ、何を得て、何を信じれば良いというのだろうか。

 

なにが目の前で焼いていますだ!ただのスピーカーじゃないか!嘘つき!

 

寒い雪山でようやく見つけて滑り込んだ、山小屋のような場所。

暗闇の中でまさぐって鍵をかけたら、今まで聞こえていた吹雪の音が小さくなった。

どうやら、密室状態を作り出せたらしい。

 

ポッケを弄る。

手探りで付けたマッチをつける。火傷しそうになる。

暖かいが、すぐに消えてしまった。

 

暖房をつけたいが、部屋に何があるのかも分からない。

 

とにかくここで夜を越そう。 

そう決めて間も無く大きな音で叩かれるドア。

 

「開けてください!このままだと死んでしまいます!」

声は、女性だ。だけど、本当に女性か?

 

武器を持っているかもしれない。誰か他にも隠れていて、食べ物を狙っているのかも。

いや、もしかすると、人間の声を操るエイリアンか?

 

分からない。確認するすべがない。

だけどもしかして本当に、「か弱い女性」なのかもしれない。

 

身の危険を覚悟してでもドアを開けるべきか。それとも無視して、拒絶すべきか。

 

「こいつを信じて良いのか?」

見えない中で、貴方はどう判断する?

 

「見たら死ぬ」なんて、死ぬしかなくない?

「観光のレポートを書いてよ」って言われたのにこんな記事を書いてしまったし、

何より観光中ニヤニヤ楽しんで見えたであろう私が「疑心感でいっぱいでした」なんて記事をあげるのには気がひけるが、それでもこれが、「視覚を奪われる」という体験によって感じた、私の感想である。

 

先にも言ったが、この観光はNetflixオリジナル映画「バード・ボックス」のPRのために行われたものだが、

この観光を終えて、映画に対して感じた感想はたったひとこと。

 

「見たら死ぬ」なんて、死ぬしかなくない?

 

予告を見る限り、主人公は子ども連れの女性である。

真昼間にガイド付きで誘導までされた先でもビクビクしていた私から言わせてもらえば、

得体のしれない「なにか」が襲ってくるような緊迫状態の中、目隠しをして過ごさなければならないなんて、

はっきり言って、死ぬしかない。助かる見込みがなさすぎる。

 

この映画がどのような結末を迎えるのか、不安しかない、怖い。

なんか、可愛い子どもが一瞬でグチャって殺されそうだ、怖い。

 

そしてこの体験を経て何よりも感じたのは、普段から「自分を信じる力」を磨いておかないと、

日常にちょっとした変化が訪れるだけで、何も信じられなくなってしまう、という、危機感である。

 

事実私は自分自身の感覚を信じられていないから、「芋」さえ、「芋」だと信じられなかった。

 

映画の中の登場人物は、どうだったのだろう。

彼女達は、「見えない中」で、自分を、誰かを、信じることができたのだろうか。

くそ……。まんまと映画が見たくなってしまったじゃないか……

 

yuzuka

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yuzuka

作家、コラムニスト。元精神科、美容整形外科の看護師で、風俗嬢の経験もある。実体験や、それで得た知識をもとに綴るtwitterやnoteが話題を呼び、多数メディアにコラムを寄稿したのち、peek a booを立ち上げる。ズボラで絵が下手。Twitterでは時々毒を吐き、ぷち炎上する。美人に弱い。

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