ネタバレNETFLIX『もうおわりにしよう。』2

考え方

ネタバレNETFLIX『もう終わりにしよう。』パート② 超個人的レビュー&解説

夜な夜なおもしろい映画を探すことを生きがいにしているライターによるNetflixコンテンツ紹介のコーナー。

 

ストーリーの完全書き起こしとレビューをお届けします。

書き起こしはゆるく、かつ完全ネタバレの徹底レポート、レビューは個人的見解と解説です。

 

今回は、Netflix映画『もう終わりにしよう。』の超個人的レビューと解説をお届けします。

 

パート①のストーリー完全書き起こしをあわせてチェックすれば、映画を観てない人も、観た人より理解できてしまう……かも、しれません。

ネタバレNETFLIX『もうおわりにしよう。』1
ネタバレNETFLIX『もう終わりにしよう。』パート① ストーリー完全書き起こし/あらすじ

夜な夜なおもしろい映画を探すことを生きがいにしているライターによるNetflixコンテンツ紹介のコーナー。 ストーリーの完全書き起こしとレビューをお届けします。書き起こしはゆるく、かつ完全ネタバレの徹 ...

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今日も一日なんとか生き抜いた私たちに訪れる、いろんな顔をした夜。

今夜はNetflixでこの映画、いかがですか?

 

妄想にも飽きて、ひとりが寂しく感じる夜にオススメ!
Netflix『もう終わりにしよう。』

もう終わりにしよう。2

 

制作:2020年/アメリカ
上映時間:134分
タイトル:もう終わりにしよう。(原題:I'M THINKING OF ENDING THINGS)
配信開始:2020年9月4日

キャスト:
ルーシー:ジェシー・バックリー(『ジュディ 虹の彼方に』、ジュディのお世話係の人)
ジェイク:ジェシー・プレモンス(『ザ・マスター』、フィリップ・シーモア・ホフマンの息子)
謎のおじいさん:ガイ・ボイド(『フォックスキャッチャー』のヘンリーさん)
ジェイクの母:トニ・コレット(『ヘレディタリー/継承』、狂気の母親)
ジェイクの父:デヴィッド・シューリス(『ハリポタ』シリーズのルーピン先生)

 

Netflix『もう終わりにしよう。』超個人的レビュー&解説

Netflixオリジナル作品として2020年9月4日(金)に登場し、SNSなどで話題騒然となっている映画『もう終わりにしよう。』のレビューと解説をお届けします。

注意:まだ観ていない人で、内容を知ってしまいたくない人は読み進めないでください!

 

ネタバレNetflix ネタバレ注意

 

カウフマン全開!

『マルコヴィッチの穴』や『エターナル・サンシャイン』などの脚本を手がけるチャーリー・カウフマン監督によるNetflix映画『もう終わりにしよう。』。

驚きの発想と一筋縄ではいかない入り組んだ構成で知られるカウフマン監督が、Netflixを舞台に全力全開でフルスイングしている作品です。

 

ジャンル分けするのはなかなか難しくて、「チャーリー・カウフマン映画」というしかないような気がしてくる本作ですが、Netflixにはそんな映画の枠をグイグイと広げてくるような作品がたくさん登場していますよね。

オンライン動画配信サービスの進出による映画界のあり方の変化は昨今のショーレースにも顕著にあらわれていますが、Netflixの強みが存分に活かされた本作も、映画祭の有力候補になるのではないかと目されています。

 

二人のカップルに隠された秘密

本作の主な登場人物は、ピークを超えたと思われる倦怠期カップルと一人の掃除夫。

彼らにはある大きな秘密があります。

 

一見理解しづらく、その秘密に気がつかないままだと2時間14分という長さもあり、なかなか「おもしろかった!」という感想は出づらいかもしれません。

ところが、いったん秘密に気がつくと、不協和音のように思えた描写がすべて、「あるある」に転化するようにできています。

 

その秘密とは、この映画にキャラクターとして実際に存在しているのが掃除夫ただ一人だということ。

主人公のように描かれている女性も、そして彼女のパートナーであるジェイクも、掃除夫がつくりあげた妄想世界の登場人物なのです。

 

そのことを一番掴みやすい描写が、ルーシーと呼ばれる女性と掃除夫の邂逅シーンにありました。

 

そこでルーシーはジェイクのことを「話しかけるわけでもなく、ただジロジロとみてきて気持ち悪かった。人生で何度も起きる何でもない単なるすれ違いだった」と語っています。

ジェイクの実家で両親に話していた馴れ初めでは、こっちを見ていたジェイクに気がついたルーシーが声をかけたことになっていましたが、真実はまったく違いました。

 

そう、掃除夫はバーで見かけただけの女性をインスピレーションに、ルーシーという女性を想像の中に作り上げたのです。

一方ジェイクは掃除夫の過去をベースに生み出された虚像であり、掃除夫の分身的存在でもあります。

 

誰にも顧みられず、ずっと孤独に掃除を続けてきた男性が生み出した空想世界。

それがこの映画の真の姿です。

 

そのことを念頭に映画を観ると、架空の人物であるはずのルーシーとジェイクが、幾度も幾度も想像世界の中でなぞられてきたことで、その世界の中で意志を持って動き出し、それぞれの人格を確立させていることがわかります。

漫画家や小説家が、作品が煮えてくるとキャラクターが場面場面でどのような行動を取るかが自分で考えなくても分かるようになる、と表現するのに近いかもしれません。

 

不穏さの正体は「あれ」

この映画にある、どこかずれたような不気味な不穏さ。

その正体は、私たちが妄想を膨らませて楽しんでいる時に、集中力が途切れてしまったりフォーカスがずれて脱線していってしまったりする時のあの感覚です。

 

ジェイクの父親の額に貼られた絆創膏や剥がれた足の爪、スマホを手にした時にだけかけるルーシーの赤い眼鏡、身体を震わせる犬。

ホラー映画として観ると不穏に映るこういった要素ですが、これらは掃除夫のこれまでの人生で強く印象に残ったヴィジョンなのです。

 

ルーシーのスマホの着信音が古めかしいベル音なのも、高齢の掃除夫には電話が鳴るといえばこの音だったからなのでしょう。

赤い眼鏡は、バーで見かけた女性がかけていたものなのかもしれません。

 

どうしてもアイスが食べたかった

乱れ始める時制、暗い車内、壊れたように変な音をたて始めるルーシー。

長年の孤独な暮らしに疲れ切ってしまった掃除夫は、いまや思考が散り散りになり、そのせいでルーシーとのドライブ帰省というお気に入りの想像さえ、つなぎとめることができなくなっていました。

 

それでもタルサタウンのイメージはパワフルで、一緒にコマーシャルソングを歌う時には少し楽しそうな雰囲気を取り戻していた二人。

掃除夫にとってルーシーとアイスクリームを食べるというイベントが、よほど大切で思い入れのあるものだったということがわかります。

 

学校のコンテナに捨てられた大量のアイスのカップは、新しい2つ以外は空っぽでした。

つまり、これまで繰り返されてきたドライブでは、会話をしながらビッグサイズのアイスクリームを食べきることができていたのです。

 

ルーシーを自由にするためのダンスシーン

中盤以降になると、二人のいる世界の設定はさらに甘くなり、歪みはどんどん大きくなっていきます。

画面は暗く時制は乱れ、会話は独り言のようになっていき、アイスクリームは食べきれないまま溶けてしまう。

 

ルーシーはそうした歪みに翻弄されて、混乱したり怯えたりするのですが、それは掃除夫の空想に費やす集中力が途切れ始めたことが理由です。

 

「もう終わりにしよう。」、これは掃除夫自身の言葉でもありました。

掃除夫は、人格を持って自働し始めたルーシーを大切に思い、愛してさえいたのだと思います。

 

だからこそ、情熱や集中力といった想像世界に傾けるエナジーが枯渇してきたせいで、ルーシーを困惑させてしまっていることを申し訳なく思っていたのでしょう。

 

不思議なダンスシーンで、自分の分身でもあるジェイクの胸を刺す振り付けがあったのは、ルーシーを自分の想像から解き放つため。

掃除夫の人生は孤独で寂しいものだったに違いないのに、それでも彼のルーシーへの愛はゆるぎなく、その純粋さは私たちの胸を打ちます。

 

だからこそ、この映画は不穏さを漂わせながらもどこか美しいのだと思います。

 

掃除夫は死んだのか

ラストシーンで掃除夫が死んでしまったのかどうかを映画ははっきりと描きません。

しかし、朝になっても雪を積もらせたまま動いた形跡のない車は掃除夫の死を示しています。彼が車内で苦しそうにエンジンをかけられずにいた時点が生死の境だったのでしょう。

 

最後のスピーチシーンは、今際の際にあった掃除夫が朦朧とした意識の中で描いた、人生最期のイマジネーションなのです。

 

「もう終わりにしよう。」と決めて、ルーシーを自分の空想から解き放とうとした掃除夫。

 

彼は最後の最後に自分が知り得た人たちを観客にして、華々しく「オクラホマ!」を独唱し、ルーシーと皆から力強い拍手を得ることができました。

そう考えると、単なるバッドエンドとは思えなくなりますね。

 

おわりに

こうして秘密を知ったうえで観てみると、この映画はミステリーやホラーの枠におさまりきらない気がしてきます。

 

架空の人物に向けられた勇敢な愛のお話でもあるし、豊かな想像力を持った孤独な男の人生最期の日を描いた物語でもあります。

「恐い、恐い」と噂になっていますし、確かに恐いと感じるのですが、決してバイオレンスなシーンは登場せず、不気味に思えたシーンのその不気味さにも、哀しく、そして美しい理由が隠されていました。

 

この世界には、誰かの想像力が生み出した本人以外触れることのできない世界が多数存在していて、それは表現されることがなかったとしても、きっとどれもとても美しいものなのだと思います。

この映画の掃除夫のように、誰にも顧みられることがなかったとしても、世界の片隅にひっそりと暮らす一人一人が、驚くほど豊かで深い内面世界を持ち得るということを私も信じてやみません。

 

誰にでも訪れるひとりが少し寂しく感じる夜に、ほんのり温かい気持ちにさせてくれる、そんな素敵な作品です。

 

ストーリーをじっくり振り返りたくなった方は、ぜひ「ネタバレNETFLIX『もう終わりにしよう。』① ストーリー完全書き起こし/あらすじ」を、あわせてチェックしてみてください。

ネタバレNETFLIX『もうおわりにしよう。』1
ネタバレNETFLIX『もう終わりにしよう。』パート① ストーリー完全書き起こし/あらすじ

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サマー

サマー

ライター/編集者 ベルリン在住。フリーランスでいろいろ書いています。ときどきイラストも。フェミニスト、動物好き、HSP気質。お仕事のご相談歓迎です。

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