仕事 考え方

有名風俗求人サイトは嘘ばかり。ダミー店にひっかかり、うんちを食べさせられそうになった話。

2018年11月12日

「体にうんち、塗れるかな?」

「は……?」

 

目次

可愛いってだけで価値のあるあの子と、付加価値をつけないと、相手にされない私

アダルトビデオを見ていた。

「こんな子がAVに!?」って見出しで売り出されているそのAV女優は確かに可愛くて、

画面からも伝わるくらい、男優たちに、大事にされていた。

 

多分彼女は「出るだけで良いんだよ」なんて言われたんだろうな、って、思った。

君は綺麗だから、普通にしてくれるだけで良いんだよって。

 

あんまり可愛くない女の子が、体にコンプレックスを抱えた女の子が、

出演回数を重ねるごとに、SMとか、アナルとか、乱行とか。

そういう「付加価値」をつけられて売り出されていくのを見て、「風俗業界と一緒だな」と絶望する。

 

「君だけでは売り物にならない」

「君は可愛い子とは違うんだよ」

 

可愛い子が喘ぐ映像を見ながら、鋭い刃物で身体中を傷つけられているような気持ちになった。

「いいなあ、これだけで売り物になって」

口から出たのは、そんな言葉だった。

 

「いいよなあ、可愛い子は。可愛いってだけで、愛されるんだもん」

ボヘミアンラプソティを見ても涙を流せなかった私が久しぶりに涙を流したのは、

感動ドキュメンタリーでも、青春ラブコメディでもなく。可愛い誰かが出る、アダルトビデオだった。

 

「あの店は、身長がもっと高くて、巨乳でさ。モデルみたいな女の子じゃないと稼げないから。君はこっちの店じゃないとね」

「ダミー店」という言葉をご存知だろうか?

風俗の大手求人サイトに出されている店舗求人には、多くの「ダミー店」が含まれている。

賃貸物件でいうところの、「釣り物件」である。

 

簡単に説明すれば、好時給やソフトサービスを売りにする、存在しない好条件のお店で求人をかけ、

女の子が応募して面接をすると、「この店は稼げないから、系列にある別のお店にも同時在籍してほしい」等と言いくるめ、本来の店(バックが安かったり、ハードメニューだったりする)に、無理やり入店させるという手口を働くために設けられた窓口、偽物の店である。

 

風俗の求人サイトに掲載されている店舗情報なんて、ほとんどが嘘まみれだということは周知の事実であると思うが、

業界が長くなってくると、それらには諦めがついてくるから、そんなに気にならなくなってくる。

(バックは嘘だし、保証も大体嘘だし、脱がないと稼げないし、触らないと稼げないし、綺麗で開放的な待機室なんてほとんどないし、ヘアメイクもほとんどいないし、身バレの危険はあるし、顔出しはすすめられるし、写メ日記は強制だし、入店するだけで20万円や犬や猫はもらえない)

 

もちろんそういう嘘も「悪」ではあるけれど、それよりもたちが悪いのがこの「ダミー店」で、こいつの存在のせいで、どれだけの女の子がひどい目にあってきただろうと想像すると、虫酸が走る。

 

オナクラだと募集をかけて、実はデリヘルだったとか、1時間1万円バックだと聞かされていたのに4000円バックだったとか。

そんなものは、まだ可愛い方だ。

 

そして恐ろしいのは、それらの「ダミー店」が、現在存在するどの有名サイトにも、

でかでかと求人を出し続けられているという事実だ。

 

実際に何度も被害にあった私は、現役時代、某求人サイトに何度も掲載取り辞めの要求を送ったが、返事が来ることはなかった。

つまりはもう、自分の身は自分で守るしかないわけである。

 

「求人情報サイトに載っているから」というのは、なんの安心材料にもならない。

そもそも風俗店で働くこと自体をおすすめしていないが、もしもどうしても働くと決意したのであれば、店選びは、慎重に行わなければならないのだ。

 

今日は、私が経験した恐ろしいダミー店との出会いと、それによって削られてしまった、二度と戻らない自尊心のお話しようと思う。

だからね、「楽チン高収入★」なんて言葉には、騙されちゃいけないよ。

 

よくある嘘だと安心してしまう

その店は、とある大手風俗求人情報サイトに掲載されていた、渋谷のデリヘルだった。

【ソフトサービスなのに稼げちゃう( *`ω´)デリヘルEDEN】※仮

1時間バックは1,3万円。雑費なし。ソフトサービス。最低保証額あり。

 

都内の平均値より少し高いバックと、「雑費なし」という条件に惹かれた当初ソープ嬢だった私は、

ソープに出勤したくない日に入る仮のお店にしようという思いで、その店に面接希望の電話を入れた。

 

「バックは、1万3000円ですよね?」

「当店はオプションが多いんです。たくさんオプションが着くので、平均1万3000円以上になります」

怪しい、とは、思えなかった。

 

今となればバックを言い切らない時点で、条件面で嘘をついていると判断できるのだが、

その頃の私は無知で、そこに気づけなかった。

 

面接の日を次の日に設定し、電話を切る。

「そのまま体験入店をしてほしいので、パンツを数枚持って来てください」と言われたのが気になった。

 

なんでパンツが何枚も必要なのか。パネルを、何パターンか撮影するのだろうか。

少しだけひっかかったが、そこまで深く考えることもないまま、面接の日になった。

 

「清潔で開放感溢れるオフィス★」と表現されていたそのデリヘルの事務所は、

渋谷の道玄坂から脇道に逸れた、それはそれは怪しい真っ暗な路地にある、古びた雑居ビルの地下に入っていた。

今まで働いた店の中でも、最高レベルの汚さだった。

 

カビ臭い、コンクリートでできた壁に、よくわからない苔のようなものが生えたそのビルの地下の入り口の扉には、大きく「18禁」と印刷された紙が、ガムテープで貼り付けられていた。

あの写真はどこから引っ張ってきたフェイクだよ!!

 

汚い。これは高級店が事務所をかまえているようなビルじゃない。

今まで格安店から高級店まで、いたるところで体入荒らし※を繰り返していたという経緯から、この扉の向こうにあるのがまともなお店じゃなさそうだという予感は、ひしひしと感じていた。

(※体入荒らし:体験入店は稼げるという理由で、いろんなお店に1日だけ入店しては辞めるのを繰り返す行為)

 

さすがの私もこのあたりから、「話だけ聞いて、おかしければ帰ろう」と決意したのを覚えている。

ビクビクしながら、重くて不気味なドアを開けた。

 

しかし、扉の中は意外にも、「よくあるデリヘルの事務所」と言った感じで、私の恐怖心は、少しだけ和らいだ。

 

事務机がいくつか並んでいて、ひっきりなしに電話がかかってきている。

パーテンションで仕切られた場所に、広いソファと、コスプレに使う衣装がかけられたハンガーラック。

お仕事バックが所狭しと並んだ背の高い棚が置いてあり、ソファの上に貼り付けられたホワイトボードには、いろんな形のタイマーが貼り付けられていた。

なんというデフォルト的な景色。なんにも変わった部分はない。

 

建物が汚いだけで、やっぱり普通のお店だったんだ。だって、○○に求人を出しているんだもん。

怪しいところなわけがないよね。

良くも悪くもこの業界っぽい、やたらと腰の低い店長がにこやかに挨拶して来る頃には、

扉を開ける前に抱いた恐怖心は、消え去っていた。

 

面接。「うんち食べれるよね?」

「可愛いから、採用は決定だよ。今日体験入店だよね?稼がせてあげたいから、すぐに写真を撮って、サイトにあげよう!どうせなら予約で埋めないとね!」

免許証を確認した店長がそう言って、私はあれよあれよというまに、下着姿になった。

 

「条件面って、書いてあった通りですか?」

「保証はレギュラー勤務(週5回以上働くこと)しないと付けられないけど、求人に載せているよりは稼げるよ」

「珍しい」と思った。求人通りの条件で働かせてくれる場所なんてあるんだ。

 

ラッキーだなと思いながら、私も怪しむこともなくぼーっとしたまま撮影に応じ、

服を着てひと段落ついた頃、ようやく細かい説明を聞かされることになった。

 

「パンツ、何パターンか撮るんじゃないんですか?」

前日持って来るように言われた下着を使わなかったことを不思議に思った私がそうたずねると、

店長はたった今撮った写真をフォトショップで加工しながら、こちらを見ずに、こう言った。

 

「ああ、それは、汚れるオプションで使うから。お店の説明するね」

「汚れるオプション……?」

 

頭にはてなを浮かべている私の前に並べられたのは、2枚の契約書だった。

「あれ……?」と首を傾げる。店名が、応募した店と異なっている。

それも、二店舗分の契約書を渡されたので、戸惑った。

 

もっと驚いたのは、そこに書かれている店紹介だった。

一枚には「即尺激安素人店。入浴せずにお待ちください。目隠ししたままご家庭に伺います

もう一枚には「ハードMばかりが揃う本物の奴隷専門店」といった店紹介が書かれている。

 

それも基本バックは、4000円だった。

 

「は?」

思わず固まっている私に、店長は慣れた口調で、こう言った。

 

「君が応募してきたEDENはね、超高級店なんだよ。石原さとみレベルの女の子だけがお客さんをとってるようなお店なの。もちろん、君のことも登録しているけどね、背も低いし、特別巨乳ってわけでもないでしょ?君みたいな普通の女の子は、こういうお店にも登録しないと、稼げないんだよ。それとも君に、石原さとみと同じくらいの価値があると思ってる?」

いやいやいや、この人は何を言ってるんだ。

 

私だって今まで、いろんなお店で働いてきた。

こんなハードプレイ必須のお店で働かなくたって、ある程度の金額は稼げてきたという実績がある。

 

「お断りします。こんな条件のお店では働けません。それに思っていたプレイ内容と違います」

はっきり言った私に、店長が淡々と答える。

 

「無理だよ。もう店に写真を出して、30分後から予約が埋まってるんだ。予約してきているお客さんはお得意様で、キャンセルされるとお店側に大きな不利益を被る。

辞めるにしても、今日のお客さんをこなしてから辞めてくれ。難しければ、それなりの措置も考えるから」

しまった、と思った。

 

荷物も免許証も、店長に預けてしまっているし、下着姿の写真だって、たくさん撮られている。

今考えれば逃げ出せば良かったのだろうが、その時の私は、その気力も失っていた。

 

「君見たいな普通の子はね、こういうことでしか大金を稼げないんだよ」

その言葉に、納得してしまっている自分がいたからだ。

 

確かにそうなのかもしれない。私みたいな容姿に恵まれていない奴は、こういう店で働くべきなのかも……。

とくに今働いている店に不満があったわけでも、

容姿についてマイナスな発言をされたわけでもなかったけれど、

もともとコンプレックスの塊だった私に、店長の言葉は、重くのしかかった。

 

仕方ない……。私がバカだった。

諦めた私に渡されたのは、オプション説明が書かれた用紙だった。

放尿する、される

飲尿する、される

浣腸○ml イチジク

浣腸○ml  シリンジ

クスコ(前後)使用

アナルファック

便を食べる、食べさせる

便を体に塗りたくる、塗りたくられる

全身拘束 猿轡 目隠し

ビデオカメラによる撮影

「うんち、食べられるよね?」

ホームページに掲載された下着姿の私の自己紹介欄には、

「生粋の奴隷体質」と書かれ、全オプション対応可能だという記載があった。

 

年齢も若く、太っておらず、体に傷がない。

風俗業界は、それだけで価値のある業界だった。

 

そして普段は減点される私の低身長も、ここでは魅力の一部になった。

マニア受けしたのか、その日の閉店までの予約は、一瞬で埋まってしまっていたのだ。

 

「さっそくお客さんのところに行ってもらうね。常連さんだから。」

怖くて固まる私に手渡されたのは、目隠しだった。

手にとってみて、驚く。

 

「これ、本当につけていくんですか?形だけじゃないんですか?」

手渡されたのは、本物の目隠しだった。

 

通常風俗店では暗闇でも透けて外が見られるような、偽物の目隠しを使う。

手錠もなにもかも、女の子の力ですぐに開放されるようなつくりのものしか使わないのが、

この業界での暗黙のルールだった。

 

知らない男性の前で無防備な姿になるだけで危ないのだ。

本当に視界を遮ったり、身体の自由を失えば、何が起こるか分からない。

「あたりまえ」だった。

 

しかしこの店で使われる道具は全て、「本物」だったのだ。

目隠しも、手錠も、縄も、蝋燭も。明らかにプレイ用ではなかった。

 

「盗撮されたらどうするんですか?お客さんの顔が見えないまま部屋に入るのは怖すぎます」

訴える私に、「偽物のアイマスクの導入を検討しておくね」と猫なで声でいったあと、店長は面倒臭いといった表情をボーイに向けたあと、事務所の奥にひっこんだ。

 

俯いている私に、ボーイが話しかけて来る。

「諦めて、今日だけ我慢してくださいね。遅刻してしまうから、いきましょう」

結局私は目隠しをされ、車に乗せられることになった。

 

「君みたいな子だと分かっていたら、こんなことはしなかった」

そこからのことは、あまり覚えていない。

「正気だと厳しいでしょう」と、精神安定剤(デパス)を飲まされたのも、原因だ。

 

その店では日常的に、在籍しているキャスト達にデパスを配っているようだ。末恐ろしい。

とにもかくにも目隠しをされたまま客の待つホテルに行き、

何も見えない状態で部屋に誘導された私は、恐ろしくてブルブルと震えながら、泣いていた。

 

そして終わりはやってくる。

目隠しをしたまま裸にされた私が立ち尽くしていると、シャッターの音がしたのだ。

オプションをつけていない状態で許可なくカメラ撮影をするのは、勿論盗撮だ。

 

すぐにアイマスクを外して、「盗撮しましたよね?」と言った私の目にうつったのは、

病的なほどに弱々しい体型の携帯カメラをかまえた男と、2台の録画ボタンの点灯したビデオカメラ、そして机に置かれた、数々の器具だった。(クスコ、シリンジ、縄等。思い出したくもない)

一体何をするつもりだったのだろうと思うと、ぞっとした。

 

だけどもっとぞっとしたのは、その男が発した言葉だった。

「もっとブスが来ると思ってたんだ。君みたいな女の子に、ひどいことをするつもりはない。ごめんなさい、ごめんなさい……。」

 

泣きながらそういった男に、言葉が見つからなかった。

だけど今なら、あの時に言いたかった言葉が、はっきりと浮かんで来る。

 

ブスなら何をしても許されるの?

可愛くないというだけで、全ての不平等を飲み込まなくてはいけないの?

ひどい扱いも、ひどい待遇も、「ブス」であれば、仕方ないの?

 

「君は石原さとみじゃないから、こういう店で働くしかない」

「ブスなら酷いことができると思った」

 

ブスって、なに?ブスって罪なの?ブスは普通に生きていちゃ、いけないの?

あの時に感じた絶望を、今でも忘れない。私は服を来てホテルのフロントに電話を入れて外に出て、

そのままタクシーを広い、在籍しているソープランドに向かった。

 

当初仲がよかった在籍店の店長がすぐに動いてくれたおかげで、

幸い無理やり登録させられたその店の在籍一覧からはすぐに私の存在が消え、免許証も、帰って来た。

 

それでもあの時に感じた闇は、今でもまだ私の心を蝕み続けている。

 

「可愛ければ、こんな目には合わなかった」

家に帰るタクシーの車内でそう呟いた私に、付き添っていた店長が、哀れんだ視線を向けた。

 

「良かったじゃない。本当にブスなら、そのまま殺されていたかもよ」

慰めのつもりでかけられたその言葉が、私の心に、また黒いどよめきを起こした。

 

ブスなら何をしても許されるの?

 

ダミー店は、消えていない

さて、恐ろしい事実をお伝えすると、こういった被害にあったのは、過去一度だけではない。

小さい嘘から大きな危険まで、全てをカウントすれば、数えきれないほどの「嘘」に、騙されて来た。

 

そして求人情報サイトには、今もまだ、多数のダミー店が存在している。

ちなみに私が被害にあった複数の店も、名前を変え、文面を変え、同じような求人を出し続けている。

(面接に行こうと事務所にたどりついて初めて同じ店だと発覚して逃げ帰ったことが何度もある)

 

何度通報しても無視されるし、仮に削除までこぎつけたって、また違う名前で登録しなおすので、意味がない。

しらみ潰しなのである。

 

向こうからすれば、1日1人でも丸め込んで客のもとに送り込むことができれば、儲けものだ。

ああいったマニア店の客は、「何も知らない新人」が、大好物なのだ。

 

おそらく今日も求人情報サイトのどこかで、まだかまだかと、何も知らない女の子の応募を待ち続けているはずだと想像すると、ゾッとする。

無防備な状態で面と向かって自尊心を傷つけられると、人が人ではなくなってしまう。

自信が吸い取られ、「しかたないのかもしれない」と絶望し、力を失い、相手に従ってしまうのだ。

 

今回こうして記事にしたのは、

「求人情報サイトに掲載されているから安全だ」といった過信を捨ててほしいという思いと、

もしもそういった店に出会ったとしたら、必ず逃げ出すようにという警告だ。

 

相手は貴女の自信を、少しずつナイフで削ぎ落とし、動けないように縛りつけようとしてくるだろう。

貴女は価値のない人間だと言いくるめようとしてくる。がんじがらめにしようとするのだ。

 

だけど、信じてはいけない。惑わされてはいけない。

あなたはあいつらがいうような、「価値の低い人間」ではない。

 

うんちも、おしっこも、浣腸も、低バックも、即尺も。

「それをすることでしか価値のない女の子」なんて、この世には存在しない。

絶対に騙されないこと。

 

自信を失って苦しいトラウマを植えつけられないように、自分自身の身は、自分で守ってほしいと思う。

 

yuzuka

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yuzuka

作家、コラムニスト。元精神科、美容整形外科の看護師で、風俗嬢の経験もある。実体験や、それで得た知識をもとに綴るtwitterやnoteが話題を呼び、多数メディアにコラムを寄稿したのち、peek a booを立ち上げる。ズボラで絵が下手。Twitterでは時々毒を吐き、ぷち炎上する。美人に弱い。

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