考え方

共依存の関係にあった彼女と僕。

2018年9月12日

リボ払いの借金120万円を抱えている、YouTuber兼ブロガーのピピピピピです。

かれこれ6年前、25歳の僕には、『社会不安障害を抱えた元風俗嬢かつ現ニュークラ嬢の生活保護受給者』である年上の彼女がいた。

好きだけど好きじゃない。

歪な恋心、複雑な両想いがそこにあった。

まさしく『共依存』という奴だ。

あの頃の僕は、劣悪な親子関係、窓なし3畳物件での貧困暮らし、バイト飛びまくり――とどめの一発として、死ぬほど好きだった女の子にフラれ、頭がおかしくなっていた。

そして人生に終止符を打つべく、ぶら下がり健康器具へクレモナロープを結ぶ練習をする日々だった。

写真が残っている理由は、憎しみだらけの地球に、怨念を注ぎ込んだ100万文字の遺書を残そうと考えていたからだ。

 

時を同じくして、彼女もまた、絶望していた。

心寂しい孤独の施設育ち、破滅願望、過呼吸――極めつけは、愛着障害ゆえの人間不信である。

 

自分が傷付くと分かっていても、『今すぐ愛されたい』を最優先してしまう。

そのあまり、ヘルスで働かされ、下心まみれの男に回され、都合の良い女にされてゆく。

こちらは、同棲中の交換日記である。

しつこいほどに、『幸せ』と『好き』を記録保存しなければ、彼女は心を保てなかったのだ。

小遣い稼ぎでキャバクラの体入へ行く際は、枕元のテーブルにこんな書き残しをしてくれた。

彼女は、愛情の繋がりを感じ続けないと、すぐに死んでしまう。

もはやその弱さは、すこぶる強かった。

 

誰も助けてあげられないほどの、恐るべき力を持った弱さであった。

とどのつまり、僕も彼女も、精神がバキバキに壊れていた。

 

そんなときに二人は出会った。

きっかけはストリートナンパである。

当時の僕は、紙コップで飯を食い、サラ金で散財し、孤独で気が狂っていた。

一刻も早く、どこかの誰かに、僕の窮状を訴えたかった。

命懸けでナンパした。魂を込めて声掛けした。

それはまるで不幸自慢のテロであった。

 

僕は正直、勇気も男気も行動力も決断力もない。

ただのボンクラ、不甲斐ない持たざる者だ。

それゆえ、時折ぶっ壊れて、なにかをやらかす。

ナチュラルハイ、全能感を迸らせて、街中を駆けずり回った。

 

「すいません、物凄いタイプなので声を掛けました」

119回くらい、同一単調なセリフを放った。

その日のうちに、彼女のマンションに転がり込んで、ケチャップLOVE文字入りのオムライスをご馳走になった。

それまでの僕は、薄暗い窓なし密閉空間で、チープなインスタント飯ばかりを食っていたから、手料理の美味しさはひとしおであった。

 

誇張抜きに、涙を流しながら平らげた。

口裂け女バリの笑顔がこぼれた。

踊り狂った。

そうなれば必然、愛に飢えていた彼女も、喜びを隠せなくなる。

こうして、『共依存』式の同棲生活がスタートした。

 

僕はいつまでも堕落するために……。

彼女はわかりやすい愛情を手に入れるために……。

『現実逃避』目的の薄っぺらい関係であった。

ヒモになった記念に撮影した1枚。

これだけに目をやると、健全で幸せな共同生活に見えるだろう。

しかしながら現実は、ぎとぎとの泥沼でしかなかった。

 

彼女には愛人のおっさんがいたのだ。

濃い化粧を施し、夜に出掛け朝に戻ってくると、数枚の万札をひらひらさせていた。

他人の金を部屋に散らして、「暴飲暴食しよっかー」「人格壊れるまで遊ぼー」「ファッキンアイデンティティ!」とへらへら笑って話した。

 

深夜ゆえ、隣人がクレームを入れてきた。

満面の笑みで無視した。

殺すぞパンピーのクソ野郎が。僕らの未来には何もねぇ-から。怖い物ねぇーぞ。地獄の血の池の底まで道連れにすんぞカスが。

そんな物騒なことを、二人でこそこそとつぶやいた。

 

僕はジェネリックのバイアグラを飲んで頭がズキズキし、彼女は精神科の薬によって情緒不安定だったのだ。

これは、デパートでご馳走をたらふく食べたときの写真である。

腹が満たされたら、上等な服屋に行き、ブランド物の洋服を物色した。

 

愛人→彼女→僕という流れで、金という紙切れが、凄まじい欲望の強風に吹き飛ばされ、左から右に飛んでいった。

頭のてっぺんから足の爪先まで、愛人の札束のおかげでオシャレを決め込めた。

社会不適合者の僕一人では、写真に写っているような、7万円のバッグ、4万円の革ジャン、1万円のパーカーといった高級極まるものは到底買えない。

 

晴れ渡る日には、噴水のある公園で、彼女をお姫様抱っこして、ぐるんぐるんと回転した。

目が回ってそのまま芝生に倒れ込んで、二人並んで熟睡することもあった。

頭のネジを外してベタベタし、現実からどこまでも逃げようとしていた。

そんな遊び狂いの途上で、ふと我に返ると、「やっぱり好きじゃない」「僕らは無理に楽しんでいる」という事実が近づいてきた。

彼女もそう感じるようになったらしく、「どうしたら幸せになれるんだろう」「好きがよく分からない」などと口走り始めた。

 

そして、至る所で過呼吸を起こすようになった。

駅構内でも、映画館でも、ショッピングモールでも。

 

そのたび警備員にお願いして、館内の休憩室に彼女を運び込み、横にして寝かせた。

手を繋いで、「大丈夫」とやわらかく問いかけると同時、「僕は今、なにをやっているのだろう?」と疑問が浮かぶようになった。

 

行き場所がないから、お金もないから……苦肉の策として付き合っているに過ぎない、そんな本音にぶち当たり、罪悪感がどっと沸いた。

耐えられなくて別れ話を持ち出したが、うやむやにされて終わるばかりだった。

 

僕は彼女に、彼女は僕にどっぷりと依存しており、簡単には外せない『共依存』という鎖で、がっちり繋がってしまっていた。

 

どんどん二人の心は壊れてゆく。

さながら躁と鬱のように、好きと嫌いの気持ちが交互にやって来るせいで、ねちねちとした歪んだ恋心を抱いてしまい、別れたいけれど別れたくないという矛盾を抱えていた。

 

そんなある日、事件が起きた。

真夜中の寝室、目が覚めると、隣に彼女がいなかった。

どうしてだか嫌な予感がした。

 

その直後、玄関の扉がぶち抜かれるような、乱暴な音が響き渡った。

「起きろこら」

身長185cmを優に超える男が乱入してきた。

 

どこかで見覚えがあると思ったら、彼女が写真で見せてくれた、愛人のおっさんであった。

続けざま、驚きの言葉が飛んできた。

「俺の婚約者に手を出して、どうなるか分かってんのか?」

 

つまり、彼女の愛人というのは、結婚するかもしれない彼氏だったのだ。

見るからに60代後半なのもあって、まさか本気で付き合っているとは思わなかった。

 

そのまま僕はマンションから叩き出され、ふらふらしていたら、危うくぞろ目ナンバーのセルシオにひき殺されそうになった。

「二度と俺の女に近寄るな。お前の人生変わるぞ」

殺意に満ちたおっさんが、車内から釘を刺してきた。

 

最低な時間である。

でも共依存を終わらせる最高のきっかけだ。

 

混乱状態であったものの僕は、奴がタバコを買いに行った隙を突き、彼女の手を掴んで逃げ出した。

そのままタクシーに乗り込んで、ラブホテル一直線にアクセルを吹かしてもらった。

 

そして、ダブルベッドで仰向けになりながら、ガチなトーンで別れ話を切り出した。

彼女のスマホを引っ掴んで、僕のLINEデータをブロックした。

すると、耳が痛くなるほど泣き叫び始めた。

 

マジでこいつが嫌い。

心の中でそう唱えながら、なぜか僕も涙が止まらなくなった。

 

この世から消えてくれ。

そう願いながらも、彼女がめちゃくちゃ愛しい存在に思えてきて嗚咽してしまった。

 

すなわち愛憎半ば――愛と憎しみが入り交じる、共依存の最も危険なゾーンに突入していたのだ。

 

太宰治など、心中自殺する人間の気持ちが分かった。

一生隣にいて欲しいほど大好きで、ぶっ殺したいほど大嫌い。

そんな異常心理になっていたからだ。

 

でも僕たちは、ギリギリのところで、踏みとどまることが出来た。

翌朝、お互いに吹っ切れた顔で解散した。

 

それから数日後、「最後に渡したい物がある」と言われて、十分だけ会った。

爽やかな心持ちで、笑顔のあるサヨナラをした。

 

彼女は、「いつか小さな花屋でアルバイトをして、ちょっとずつ生活保護から抜け出せるように頑張りたい」と嬉しそうに語っていた。

 

僕の人生ではじめて出来た彼女だったからこそ、行く道は違えど、素敵な幸せに巡り会ってほしいなーと心から願った。

これが本当に最後であった。

The following two tabs change content below.

ピピピピピ

リボ払い借金120万円。Fラン大学除籍処分の高卒、職歴なし、免許なし、資格なし、彼女なし。ここ数年、親の経営コンサル会社にて社内ニート(職場でゲーム・映画視聴など)をしていたが、事業縮小に伴い、30歳にして自活せざるを得なくなった。えぐい手数料の借金を自力返済しながら、YouTubeやブログにて、自分の壊れた人生をそのままに投稿している。

おすすめ記事一覧

1

デートだけで何十万円という大金をもらえる。 風俗のように、不特定多数と関係を持たなくても良い。   そんなタレコミで、近年「パパ活女子」と言われる女達が、SNSを中心に、どっと活動的になった ...

2

お金がないのに子どもを産む。 その選択を、どう受け取りますか?   皆さんは、痛快!ビッグダディというテレビ番組を覚えているでしょうか?   8年にわたり、ある大家族に密着した、ド ...

3

「だんだん洗脳されていたと思います。私が殴られるのは、不安にさせた私が悪い、私のことを好き過ぎてたまらないからこんなことをしてしまうんだ。って……。」(みやめこさん) 近日話題になった「#mee to ...

4

「セフレの気持ちが分かりません」 私の元に寄せられる相談は、ほとんどこのひとつの質問にまとめられると言っても過言ではない。   「セフレの気持ちが分からない」 付き合っていないのに身体の関係 ...

5

こんにちは!エロインフルエンサーのねこです。 最近、女性向け雑誌をはじめとする各メディアにて、セックスに関する話題をよく目にします。   その影響もあってか、彼氏やセフレとのセックス事情につ ...

-考え方
-

Copyright© ぴくあぶ - peek a boo , 2024 All Rights Reserved Powered by takeroot.