風俗で働いていると決まって書かされる、くだらないプロフィールの中に必ず登場する質問。
「あなたの、将来の夢は?」
日々せこせこと体を売っているレディーに対して、なんと酷な質問を投げかけるのだろうと思いつつ、
私はいつもその質問に、「お嫁さん」と、答えた。
「自分のお店を開きたい」とか、「ネイリストの資格を取りたい」とかいう定番の答えと比較してみると、
「じゃあなんでこんなところで働いてんねん」と突っ込まれる率が高いところから見ても、プロフィールを真に受けるお猿さんたちからすると、
自らの足で理想から遠ざかっているじゃないかと説教でもしたくなるようなあほらしい回答だったようだ。
だけど、ほとんど嘘で塗り固めたあのプロフィールの中に書いた答えの中で見てみると、あの答えは多分、最も真実に近い。
性感帯「肘」職業「カフェ店員」なんていう0、1秒で書きなぐった嘘八百の答えなんかよりは、
3秒ちょっと迷って書いた「お嫁さん」という答えの方が、よっぽど私の心の内を表していたのではないか、と思う。
(心のうちを知りたい奴なんていなかったと思うけどね)
「将来の夢は、お嫁さん」
実は同じ答えを、保育園の時に書かされた「しょうらいのゆめシート」にも、記入している。
いつか素敵な王子様に出会って、心ときめくデートを重ね、ロマンチックなプロポーズをされて、結婚する。
それは間違いなく私の描いていた理想の人生で、そしていつか、手の届くはずの未来だったのだ。
さて、私は27歳。
予定では23歳で結婚しているはずだった私だが、みなさんご存知の通り、まだ未婚。
つまりは、結婚していない。
地元の友達はもう3人目の子どもがいたりして、すっかり母親の顔になっているけれど、
私はせいぜい、世話をする犬の数が増えたくらい。
母性はちょっと増えたかもしれないけれど、もちろんお腹は一度もいためていないし、苗字だって、0歳の頃のままだ。
このままでは、バカにされる……。
昔ならそうやって焦っていたかもしれないけれど、「早く結婚したーい!」なんて、いつも脳内でウエディングドレスを試着していた高校生の頃から、随分と時代は変わった。
目次
「結婚しなくて良い時代」到来
結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです
あの「ゼクシィ」が2017年に掲げたキャッチコピーだ。
良いか、あの「ゼクシィ」である。
結婚したけりゃゼクシィの角で殴れとまで言われていた(言われていない)結婚情報誌の王道、ゼクシィが、ついにはキャッチコピーで
「結婚しなくても良い」と、言い切ったのだ。これは、革命である。
「女の賞味期限は25歳だ」なんていう言葉が平気であたりを行き交い、結婚をしないと変人扱いされる時代は、多分、終わりつつある。
寿退社なんて、専業主婦なんて、目指さなくても良い。
男に媚びて、取り入る必要なんてなくなったのだ。
あちこちで、女性の権利が叫ばれた。
女だからなんてくそくらえ。自立して働いて、地位も確立させて。
誰にも媚びずに好きなように生きていける世の中、最高じゃないか。
時代は、「結婚しなくても良い時代」になったし、それと同時に、結婚の形も、大きく変わった。
籍を入れて、男性側の苗字になって、会社を寿退社して、専業主婦になる。
そういう、誰もが夢をみていると思われていた「オーソドックスで明るい未来計画」
だけどそれは、決してオーソドックスでも、全員の夢でもないんだぞって、やっとそういう声が、明るみに出たわけだ。
それはちょっとしたブームメントになって、SNS上の発言も、そういったコメントで溢れかえるようになった。
「男が専業主婦を望むのは、女性軽視。男に媚びるなんて、私にはできない」
「どうして結婚して、男の苗字にならなきゃいけないの?夫婦別姓で良いでしょう」
「結婚なんて、男性側にしかメリットがない。一生家政婦?ありえない」
なんとなく、なんとなくだけど、多分彼女たちにとって、結婚はダサかった。
確かにイキイキと生きる格好良い彼女たちを見ていると、いつのまにか「結婚願望がないこと」が、現代の女性の正しい形のように思えて、
私は大声で「結婚願望がある」とは、言えなくなった。「今時結婚したいの?ばかじゃない」って、思われる気がしたのだ。
「結婚願望なさそうだよね」という言葉に傷つく
私が「結婚願望なんてない」と言い始めた理由は、それだけではなかった。
いつのまにか、「私なんかに結婚願望があってはいけない」という思いに縛られるようになったのだ。
私はフリーランスになってから、気が強くなった。
というよりも、気を強く見せなくては、やっていけない場面が増えた、という表現が正しいかもしれない。
看護師として正社員で働いていた頃、私に一番求められたのは「協調性」だった。
できるだけ周囲と衝突せず、特異的な発言はせず、穏便に、だけどちゃんと働く。
それさえできれば好かれたし、評価された。だからいちいち、周囲に歯向かう場面がなかったのだ。
だけどフリーランスになってから、私に一番求められたのは「個性」だった。
人と違っていなくてはならないし、自分の発言を自分で選ばなければならない。
時には「違う」と声を上げる必要があるし、自分の感覚を信じるために、誰かの意見を曲げなくてはいけない場面もあった。
甘く見られると搾取されるという恐怖が、常に胸の内にあったのだ。
だから私はどんどん、所謂女らしさみたいなものを脱ぎ捨てるようになって、その頃から頻繁に
「yuzukaさんって、結婚願望がなさそうだよね」と、言われるようになった。
ああ、そう見えるんだ。って、思った。
「結婚願望がありそうな女の子」として名前を上げられる女性たちは、明るくて、ふわふわとしていて、
女性的で、それでいて暗い過去なんて経験をしたことのなさそうな透明度と、それから、か弱さを持ち備えているように思えた。
よく言えば「かわいい」悪口を言うならば、「ばかっぽい」
「年収1000万以上のイケメンと結婚して専業主婦になりたい」と正々堂々と言ってのける彼女たちは、多分私よりも、仕事に誇りは持っていない。
だけど私だって、彼女たちが持ち合わせている「か弱さ」や、「健全さ」。そのどれもを、持ちあわせてはいなかった。
世界が違うんだ、と、思うようになった。
私みたいな一人でも生きていけそうな、一人で生きていくべき人間が「結婚しなくても良い時代」に、
わざわざ「結婚をしたい」というのは、すごく格好悪くて、お門違いなことなのではないかと思った。
私みたいな人間は、仕事に打ち込んで、「男なんてくそくらえだ」と誰にも媚びずに、一人で生きていくべきで、
おそらく、それが「クール」だ。
「結婚願望がなさそうだよね」という言葉が、「結婚したいなんていわないよね」という忠告に聞こえるようになった。
ああ、そうか。
お門違いなものをねだるなんて、かっこ悪くて、ダサくて、イタい。
そうやっていつのまにか私は、「結婚なんてしたくないよ」って、自分にも、周りにも、言い聞かせるようになった。
「本音はどこにあるのか」って話
ここからは、本音で話をしたい。
ずーっと閉じ込めてきた思いだけど、きっと同じ気持ちの人って、いると思うから。
私は、結婚がしたい。専業主婦になりたい。ばりばり働きたくなんてないし、
子どもだって欲しい。郊外の家で、愛する人のために、子育てや家事に専念したい。
そう、これが本音だ、言えなかった本音だ、多分。
多分これって、一部の人からしたら、「ダサい」のかもしれない。
いつまでも男に頼って、自分がないなんて、思われてしまうかもしれない。
か弱くもない、手に職を持っている、そのうえ可愛くもない私が、わざわざ結婚を望む。
こともあろうことか、専業主婦になりたいとまで思う。
え、格好悪い?
だけどそれの、何が悪いっていうの?
「好きな人と結婚したい」
理由なんて、そういうシンプルなものでも、悪くないと思う。
私はただ、保育園の頃から夢見ていた、素敵な旦那さんのために家事をする、「幸せそうな日常」を、この手で掴んでみたいのだ。
結婚して好きな人の苗字になるのは幼い頃からの憧れだし、私は仕事なんて、愛する人のためなら、きっと投げ出せる。
これは、ばかげているのだろうか。ださいのだろうか。自分を一番に守れないのは、時代遅れで、浅はかなのだろうか。
私はそうは思わない。
専業主婦の、何が悪い。男に媚びるのの、何が悪い。
いいや、なんにも悪くない。
多分、誰もが大事なものを抱えている。
それは仕事かもしれないし、愛する人かもしれないし、はたまた、自分自身かもしれない。
それぞれの優先順位は、人によって、まちまちだ。
だけど、そのどの答えも、正しいと思う。
「結婚しなくても良い時代」
時代は変わった。良い意味で。
昔のように、人目を気にして結婚する必要は、なくなりつつあるのかもしれない。
だけど私は「結婚しなくても良い時代」に、「どうしても結婚したい!」って言う人がいたって、格好悪くはないと思う。
「専業主婦になるのが夢です」って大声を出したって、それはそれで、格好良いと思う。
なんだろうな、たったさっきまで、
「言ったらバカにされる」とか、「思っちゃいけない」とか、そんな気持ちを抱えていた気がしたんだ。
私と同じように、「私なんて結婚したいと思っちゃいけない」と思ってしまっている女の子。
もしかして、この中にもいるのかな。
あのね、貴女は、思うがままに誰かを愛しても良いし、愛されることを望んでも良いんだよ。
「結婚したい」と望むことは、「結婚したくない」と思うことと同じくらい、格好悪いことじゃない。
言おうよ、胸を張って。「結婚願望はあるよ」って。
なんだか「結婚なんてしたくないよ」と言うたびに、かすかに胸の奥がチクチクと痛むから、言葉にしてみた。
結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです
誰もが、そう思える相手に出会えることを祈って。
yuzuka
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