「分からないんだよね」と言って笑った。
視線を落とした先にあるマグカップの中では、ふわふわと生クリームが揺れている。
ココアとホイップ。可愛い。甘すぎて飲みきれた試しはないけど、最高の組み合わせ。可愛い。
花柄のランチョンマットが敷かれた机の向かいに座っている女の子は、私の親友だ。
彼女は、グリーンスムージーが似合う。
金髪にしてもヤンキーに見えない、天使のような顔をした女の子だった。
「だからさあ、そんな奴のどこが良いってわけ?」
天使は、怒っても可愛い。ふくれても泣いても可愛い。羨ましい。
「聞いてる?」
はっとして、顔をあげた。
怒った天使が、不服そうにこちらを見つめている。
おいおい、なんだよその可愛い表情は。
肘をついて顎を乗せた手の甲から伸びる細い指先。
その左手の薬指には、華奢な指輪が光っていた。
ああ、私もこれくらい可愛ければ、こんなことにはならなかったのだろうか。
彼女のように、幸せになれたのかな。
ぼーっと彼女を見つめながら、私はまた、「分からないんだよね」と言って笑った。
目次
正論なんて、正論でしかない
人は裏切りにあった時、いつも思うのだ。
「どうしてこんなに酷いことができるの?」って。
だって嘘はつかないべきで、人は裏切らないべきで、人を傷つけたら、ちゃんと謝るべきで。
それでいて誰かを悲しませてしまったら、自分も同じように悲しむのが「ヒト」って奴だと思ってた。
ヒト。ヒト亜族に属する動物の総称。ウィキペディア。
ねえ、それなのにどうして?どうしてなの?
私達が「こうだろう」と思う予想は、ことごとく裏切られる。
「そんなことをするはずない」は平気で裏切られたし、
「こんな特別な約束は破られない」と思った約束は、踏み潰された。
そう。ヒトはどこまでも不誠実だった。
あれ?違う。私が知ってる「ヒト」と、違う!
だって小学校の道徳で、習ったんだ。
「さとみちゃんに嘘をついたさとしくんは、悪いことをしたと反省しました。
酷いことをしたと後悔して、さとみちゃんに謝りました。」
そう。そうなるはず。はずなんだ。
それが正しい形。後悔して涙を流すのは、裏切ったさとしくんのはずだった。
だけど、教科書から飛び出した現実の世界での「ヒト」は、そうじゃなかった。
ヒトはそんなに優しくもなければ、キレイでもない。
「どうして?どうしてこんなことができるの?」
残念だけど、「本物のヒトとはそういうものだ」としか、言いようがない。
人はずるい。自分が可愛い。
自分のためなら平気で嘘をつき、人を裏切り、傷つけたって、謝らない。
そしてその「自分のため」には、おそろしくくだらないものも含まれる。
なにも悩んで悩み抜いて、命のために泣く泣くヒトを傷つけるわけではなくって、
ごく普通に、なんとなく裏切る。そこに罪悪感は、ない。
それに、そろそろ気づかなきゃいけない。
それを、そろそろ認めなければならない。
裏切ったやつが裏切った本当の理由なんて、たかがしれている。
「だって楽しそうだったんだもん」
そんなもの。そんなものなんだ。
裏切られた理由を考えるのは辞めよう
「どうしてそんなことをしたの?」
正論から逸脱した行動を、私たちは理解が出来ない。いや、理解なんてしたくないから、必死で考える。
私のどこが悪かったのだろう。私が何をしたっていうんだろう。
彼はどうして私を傷つけるようなことをするのだろう。傷つけて、何も思わないのだろうか。
いや、そんなはずはない。きっと深刻な理由があるんだ。何か考えがあるんだ。
そうでなきゃ、こんな酷いことをするはずがない。
どうして、どうして、どうして……。
残念ながら、答えは出ている。
傷つけて、何も思わないのだろうか。
そう。正解。彼は、何も思わない。
彼が裏切りを繰り返したり、嘘をつき続ける理由は、貴女の中にはない。
彼が裏切るヒトだった。それだけだ。
ヒト亜族に属する動物の中にも、二種類の「ヒト」がいるんだ。
「裏切るヒト」と、「裏切らないヒト」だ。
貴女がひいたのは、ハズレだった。ヒトの中でも、裏切るヒトだったのだ。
「裏切るヒト」をひいてしまった場合、貴女がどれだけ良い女であっても、
涙を流して悲願しても、いつか必ず裏切られるし、何度許したって、裏切られ続ける。
だって、「裏切るヒト」は、そういう生き物だから。それは、習性だから。
どうしたって変えられない。勿論、貴女が悪いわけでもない。
だから、「どうして?」って、考えるのは辞めた方が良い。
答えは出ている。彼は「裏切るヒト」だった。
悲しいけれど、答えは出ている。
「裏切るヒト」をひいてしまったあなたがとるべき行動
長々と書きたいところだけれど、一言で言おう。
貴女が幸せになるためには、基本的には「裏切るヒト」から離れるしかない。
貴女が努力したって、なかなか彼は、変わらない。そういうものなんだ。
貴女自身が幸せになるために、体力や気力を奪われないために。
ひけるものなら、ひく。逃げるものなら、逃げる。
石の上にも三年?
冷たくてゴツゴツした石なんて、すぐに捨てて立ち上がるべきだ。
だけどどうしても、離れたくないのであれば。
「彼はそういう動物だ」と理解したうえで、一緒に習性を変えていく努力をするしかない。
自分を責めたり、理由を突き詰めようとグルグル部屋中をまわるのを辞めて、
「よし、しつけよう」って、それくらい強気じゃないと、貴女がやられてしまう。
「しつける」
それって、すっごく難しいし、必ず長期戦になる。
トイレを覚えないはずの動物に、トイレを教えるようなものだから。
だけど、それでも、どうしても彼が良いのなら、正論にすがりついて苦しむのは辞めて、
ちょっと上から目線で、頑張るしかないんじゃないかなって、そう思うんだ。
頑張ってみて、疲れてきたら、「もういいや」って、捨ててしまう。
それくらいの気持ちじゃなきゃ、きっと貴女、潰れちゃう。
だって今も、泣いてるんでしょう。
男のしつけかた?それはまた今度。
「どうして好きなの?」に、答えなんてない
「だからさあ、そんな奴のどこが良いってわけ?」
ぼーっと彼女を見つめながら、私はまた、「分からないんだよね」と言って笑った。
好きに理由なんてない。
裏切られても、嘘をつかれても、イケメンじゃなくても、傷つけられても。
「スキ」って気持ちがある限り、私達はそのヒトを、愛おしく思ってしまうものなのだ。
裏切られることにも、「スキ」にも。
ちゃんとした理由なんてないから。
だから、もっと本能のまま、全てを受け止めて流れに身を任せてみるのも、たまには良いかなって思うんだ。
だけどね、「スキ」のせいで貴女が苦しみ続けるのは、ちょっと悲しいから。
いつものひとことだけ、添えておく。
その男を捨てたら、幸せになれるんじゃない?
あなたには、幸せになる権利がある。
貴女の幸せを祈って。
yuzuka
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