考え方

私が「親なんて愛さなくて良いよ」と言い続ける理由

卒業式で答辞を読んだ。全校生徒代表の、アレだ。

 

文章は得意だったから、すぐに書き上げて、すぐに提出した。

大好きだった担任は「凄いね」とひとしきり褒めた後、

「両親への感謝が抜けてるよ」と、遠慮がちに言った。

 

分かってたよ。

卒業式のスピーチも、結婚式のスピーチも。

「両親への感謝」ってのが必須なんだ。

 

みんなが当たり前に期待する。涙を流したがる。

ありきたりな「エピソード」みたいなの。そういうのでしょう。

 

でも書けなかった。だって、ないから。エピソードって、なに?

 

小さい頃、テレビの中にうつる「家族」ってやつを見て、

「ツクリモノ」だと思ってた。みんなで笑顔で食卓を囲む?なにそれって思ってた。

子どものために親が奮闘するとか、涙を流すとか。

 

そんなのありえないでしょ。って、そう思ってた。

だけどちがった。全然違った。

 

友達の家に行って、それが間違いだったことに、はっきり気づいた。

おい、あれって、あのテレビの風景って、現実の風景なのかよって、そう思った。

 

私は母親の手作りのご飯を、多分人生で3回くらいしか食べたことがない。

他は全部、マクドナルドとか、定期的に届けられる冷凍された「弁当」だった。

 

物心がついたときから、「ブス」だと罵られた。

なんでそんな顔で生きてるの?とまで言われた。

 

殴られたことはない。でも、抱きしめられた記憶もない。

 

だけどそれが「当たり前」だったから、ショックとか、可哀想とか。

そういう気持ちすらなかったのだ。

 

風邪をひいたら、怒られる。

「なんでお金がかかるような状態になるんだ」と舌打ちをされる。

テストは高得点が当たり前で、褒められたことなんてない。

 

発達障害の弟の精神状態が極限だったとき、思いっきり顔面を蹴られて。

顔中紫色になった時も、私が怒られた。

 

そんな顔で誤解を受けるのは母親なのだ、誤魔化せと怒鳴られて、

次の日「こけた」って笑う私を、担任の先生は、悲しそうに抱きしめた。

 

今考えたらおかしい。自分にだって分かる。

分かるから、いつかこういうことも言葉にしたいって思ってた。

 

「親を大切にしなきゃいけない」って常識を振りかざすことを、やめて欲しい。

「すべての親は子どもを愛している」という幻想なんて、とっとと捨てて欲しい。

 

そういう世間では当たり前だと思われている「神話」を「都市伝説」を、

他の誰かに押し付けるのは、絶対にやめて欲しい。

 

子どもを愛していない親なんて、腐るほどいる。

これは事実だ。直視しろ。

 

「そんなわけない」っていうおまえ、自分の物差しを捨てろ。

世の中そんなにフェアじゃない。

 

だって、そうでしょう。

子どもを産むのには、適正検査なんてない。免許もない。

選ばれし者がそれ相応の難関を突破して、ようやく産めるってもんじゃない。

 

子どもなんて、セックスさえできれば、勝手にできてしまうんだから。

(ここでは不妊の話は省く)

 

悲しいことに、親になる資格なんてないような人たちも、簡単に子どもを産み落とせる。

 

彼氏を繋ぎとめたいがための間違った「妊活」なんかがその典型。

恐ろしい。子どものためじゃない。自分のために。性欲で、独占欲で、

せっせと子どもをこしらえる。

 

生まれてしまった子どもは、へたすりゃ100年以上も生きなきゃいけないのに、

そんなことは御構い無しだ。そういう親が、本当に存在する。

 

虐待はあとをたたない。

どこかで子どもが泣いている。言葉によって、暴力によって「親」ってだけで掲げられる絶対的権力に、支配されている。

選んでもないのに。同意もしてないのに。

 

「子ども」ってだけで、親を敬うことが当たり前だなんて思うな。

愛して当然、そうでないと親不孝、反抗、天邪鬼だなんて思うな。

 

産み落としたのは勝手だし、乳を与えたのも勝手でしょう。

「おなかを痛めて産んであげたのに」なんて話、いつまで振りかざすつもり?

 

親はね、無理に愛さなくて良い。感謝も、しなくたって良いよ。

それを「おかしい」と否定する人間は、放っておきなさい。

 

虐待や暴力を「ままも辛かったんだよ」なんていう奴は、無視しなさい。

そんなことが、許されるわけがないの。あなたはなにも悪くない。

 

親のせいで、人生を狂わせられる人は、たくさんいる。

そんな人たちが存在するこの世界で「親は、絶対に子どもを愛している」なんていう言葉を当然に押し付けることを私は立派な暴力だと思ってる。

 

答辞の話がどうなったか。

結局私は、嘘のエピソードを書いた。「毎日おにぎりを作ってくれた」とか、そういうの。

 

精一杯の抵抗だった。

 

yuzuka

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yuzuka

作家、コラムニスト。元精神科、美容整形外科の看護師で、風俗嬢の経験もある。実体験や、それで得た知識をもとに綴るtwitterやnoteが話題を呼び、多数メディアにコラムを寄稿したのち、peek a booを立ち上げる。ズボラで絵が下手。Twitterでは時々毒を吐き、ぷち炎上する。美人に弱い。

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