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朝まで待って

朝まで待って

夜と朝の中間地点、午前3時30分。

まだ外は暗いけど、仮に気晴らしに飲みに行ったところで、すぐに朝が来てしまう。仲良しの友達は夜型人間だけど、さすがにもう目を閉じている頃だろうし、電話が繋がったところで、この感情は、うまく言葉にできっこない。

鼻の奥までつんとするくせに、涙すら零れてはくれない。「私」は溜息をつき、それならと、塞ぎ込む。誰にも迷惑をかけないように。誰かの中のいつもの自分を、崩さないために。

 

そんな「私」が、きっとこの時間、世界中にたくさん存在するのだろうと想像する。

何も変わらない日常の中で、不意にあたりが真っ暗になる時がある。

 

そのきっかけはほんの些細なことで、何も無い道で躓いたとか、電車を寝過ごしたとか、そんな程度。

だけどその小さな小さなきっかけが今まで無意識に膨らませていた風船に、ぷちんと穴をあける。

 

途端にはじけた、今まで必死で溜め込んできた「悲しさ」や「切なさ」や「虚しさ」がまるで白い絵の具に落とした黒い絵の具のようにどんどん心に漏れ出していく。自分がどこにいるかが分からない。随分前からたった1人で、誰にも必要とされていなかったような気がする。

世界のど真ん中で取り残されたような孤独感。一生このままなんじゃないかという絶望感。

 

誰かに来て欲しいけど、誰でも良いわけじゃない。 そして「私」が来て欲しい人は、決して来てはくれない。

 

寂しい。切ない。悔しい。

そんな時人は、重要な決断をしてしまいがちだ。

勢いで。しかも破滅的でなげやりな。

 

もう全てを終わりにしてしまおうと、そんなに重要な選択を、簡単にしてしまいそうになる。

わけのわからない闇から逃げ出したいがための強硬手段だ。

 

死にたい。

あの人とお別れしたい。

何かを辞めてしまいたい。

全てを終わりにしたい。

 

だけど、どうか立ち止まってほしい。

 

苦しいけど、悲しいけど、楽になりたいけど。

どうか立ち止まってほしい。

 

暗闇に飲まれたこの時間 、あなたのことを大切に思う人がいないこの時間 、どんな音も鳴りを潜め、沈黙が襲うこの時間。

この時間にだけは、大切な決断をしてはいけない。

勢いで間違った方向にすすんではいけない。

 

暗闇に飲まれているのだ。正しい方向なんて、分かるはずが無い。

ほら、もうすぐ夜が明ける。

 

外の世界が明るくなって、いろんな音がうるさいくらいに合唱をはじめ、あなたを知る誰かが起きてくる頃、その時まで、その決断をするのを待ってほしい。

大切な決断は、夜が明けてからでも遅くないのだ。

「できたね」

初めて 名前をよべたこと

ミルクを飲めたこと げっぷ ねがえり

 

何かをするだけで褒められていたのは、いつだっただろう

夏の風を受けながら、涼しく軽やかな風を受けながら、愛することになんの抵抗も疑いを覚えなかったのは、いつだっただろう

 

あの頃、誰かがあなたを認めることを、あなた自身が疑わなかった。

抱きしめられることも、愛されることも、疑わなかった。

 

あなたは暖かい温度と涼しい風を受けながら、ただ微笑むだけで、抱きしめられるだけでよかった。

「あなたがいること」が価値で、何にも代えられない誰かの幸せだった。

そしてあなたはそれを、知っていた。

 

私たちはいつのまにか大人になって、できないことを責められるようになった。

気づけば自分のできないところばかりを探して、愛されない理由を指折り数えた。

裏切られても傷つけられても、それを正当化する理由を見つけようとした。

 

「私だから」「私のせいで」「私なんかが」

あなたが「あなた」であることを、大切に思えなくなったのは、いつからだろう。

 

あなたがあなたであることは、ただそれだけで価値がある。

その価値を認めてくれる人以外は、放っておけば良い。

 

こんな世の中だから、全てを切り捨てることもできないし、その必要なんてないけれど、あなたの一番そばにおいておく人だけは、あなたがあなたであることを大切に、愛おしく、幸せに思ってくれる人にしよう。

あなたには価値がある。

 

あなたはもっと褒めれられて、愛でられて、幸せにしてもらう価値のあるひとだから。

誰かのために、「あなた」を押し殺す必要なんてない。

 

あなたは、あなたで良い。 あなたは、あなたが良い。

 

「あなた」を一番大切にしてあげないといけないのは、

愛さないといけないのは、幸せにしなくてはならないのは、

他でもない「あなた」だから。

 

「あなた」をもっと愛せる自分でいよう。

そしてそんな大切な「あなた」のために、「あなた」を大切にしてくれる人を選ぼう。

あなたは、あなたであるだけで価値がある。

 

あなたであるというだけで、幸せになる権利がある。

今日も生きていてくれてありがとう。

あなたが笑える明日が、ありますように。

yuzuka

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yuzuka

作家、コラムニスト。元精神科、美容整形外科の看護師で、風俗嬢の経験もある。実体験や、それで得た知識をもとに綴るtwitterやnoteが話題を呼び、多数メディアにコラムを寄稿したのち、peek a booを立ち上げる。ズボラで絵が下手。Twitterでは時々毒を吐き、ぷち炎上する。美人に弱い。

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