美容 考え方

私はこれからも「ブス」への差別と戦い続ける

2018年8月29日

「常に女である」ということは、生きているだけでは実現しづらい。

大声で下品に笑おうが、ムダ毛の処理を怠ろうが、息をしていれば生物学的な女として生きているのには変わりないはずなのに、世間はそれを許さないらしい。

 

「女は美しくなければいけない」

誰が決めたわけでもない。神様が人間の脳みそにインプットしたその当たり前は、美しくない女を、どれだけ苦しめただろうか。

 

夢は叶うと花火をあげるディズニー映画も、トキメキが止まらない少女漫画も。

ハッピーエンドに必要な条件は、ヒロインが美しいこと。

ガラスの靴を落としたシンデレラが美しくなければ、彼女は生涯家政婦として閉じ込められていただろうし、美女と野獣が「美男と野獣」だったら…野獣の魔法はきっと解かれていないだろう。

 

「ブスに人権はない」「ブスに発言権はない」

誰も大声では言わない。でも確かに存在するブスへの差別。

女として生きることを優先しなかった女への差別。

 

私たちは日々行われる品定めの中で、心を消費していく。

 

目次

「ブス」と「美人」、ふたつの扱いから分かったこと

私はその差別を、両方の立場から体感している。

自分よりブスが多い職場で、私は何をしても許された。

ミスも遅刻も、覚えられない雑務も。男達は笑って、喜んで手助けしてきた。

 

驚くことに、それは男達だけではない。

女の先輩も私をこぞって可愛がり、どんな時も味方でいてくれた。

 

私よりもブスな女の子は、直接ブスとは言われなくても、小さなミスを酷く責められていたし、「そんなこともできないのか」と罵られていた。

注文を間違えて食材を無駄にした私に笑いかけながら、レンゲを床に落としただけの彼女には、怒鳴り声を浴びせる。

 

休憩室ではいつも私が主役になり、何を答えても持て囃された。これが「女として扱われる」ということかと思った。存在を無視される私よりもブスな女の子を横目に、その品定めの残酷さを痛感していた。

狭い世界で美人として扱われた私は、最後まで、まるで価値のある人間であるかのように大事にされた。

 

私よりもシフトを入れているあの子より

私よりも仕事の覚えが早いあの子より

私よりも職場に貢献したあの子より、

当たり前のように大事にされた。

 

容姿で優劣をつけられる。

怖いぞと思った。これは環境次第で立場がひっくり返る可能性があるのだから、恐ろしいことだと思った。

そしてその予感と胸騒ぎは、見事に的中する。

 

それは美容外科に就職した時に起こる。

美を売りにしているその職場に、「私よりブスな女の子」はいなかった。

 

私はその当時と、真逆の対応を受けることとなる。

みんなが女として生きていて、顔には女がぬりたくられ、綺麗だった。

間違いなく綺麗だった。私とは比べ物にならないほどに。

 

私はその場に放たれて、容姿カーストの最下位となる。

今まで武器にしていた、ありとあらゆるものが使えなくなった感覚だった。

 

私の存在は薄まり、相手にされなくなる。

小さなミスにイライラされ、ため息をつかれた。

自分よりも可愛い女の子達のそばにいると、私は限りなく淀んだ空気のような存在となる。

 

興味を持たれず、存在に気付かれず、発言や行動に意味を持たなかった。

女であれば、絶世の美女でもない限り体験したことがあるであろう、あのなんとも言えない居心地の悪さ。

 

一方が褒められ、ありとあらゆる質問を受け、人を笑顔にする。

非難されるわけではない。いじめられるわけでもない。

 

それでも、いない事にされる辛さ。

ブスに興味はないという空気を、全身に浴びせられるあの感覚。

 

「美人である」というだけで、全ての言葉に説得力が生まれ、「ブスである」というだけで、全ての言葉の意味は、なくなった。

 

「ブス」への不当な扱いは、間違いなく差別だ。

「ブスのくせに」

その言葉が持つ、恐ろしい差別的な側面から、誰もが目を逸らしている。

 

生まれた瞬間、いや、生まれる前から決まっている容姿で、全てを判断されるのだ。

肌の色だとか、生まれた場所だとか、そんなのと同じくらい「どうしようもないこと」なのに、容姿だけは、平気で差別対象となる。

 

不幸な生い立ちや、騙された過去を見ても「ブスだから仕方ない」と納得され、痴漢やストーカー被害ですら虚言を疑われる。

「ブスだから」「ブスなのに」「ブスのくせに」

 

美人とブスの生涯賃金の格差は、3600万円。

美人とブスの模擬裁判で、多くの美人は反省を認められ、ブスはまた繰り返すと判断された。

ブスは美人よりも日給が5%以上低く、美人の書いた論文の方が、「説得力がある」と高評価される。

 

美人なだけで有用な人だと判断され、ブスなだけで「使えないのではないか」と首をかしげられる。

ブスは面接に落ち、美人は最良企業に内定が決まる。

これらは全て、正式な研究で得られた確かなデータだ。

 

「美人はブスより得をする」

残念だが、残酷だが、これは紛れもない事実。

 

これは「区別」だろうか。

これは「仕方の無いこと」なのだろうか。

黒人差別は許されないが、ブスの差別は「理解するしかない」ことなのだろうか。

 

ブスは死んでも笑われる

私達は顔面至上主義の世の中で、今日も生きている。

品定めされ、バカにされ、時に持て囃されながら、無意識のうちに顔面偏差値を競い合っている。

 

「ブスは死んでも笑われる」

 

よく、ブスは病気だから、美容整形は保険適応にするべきだ。

なんて言葉が、賛同の意見に囲まれているのを目にするが、それがどれほど恐ろしく、虚しい思考に犯された考えであるかに、彼女たちは気づいているのだろうか。

 

肌の色も、目の色も。「治療しろ」だなんて言われないのに、

目の形や鼻の形は、平気でそんな言葉を浴びせられても許されるのだろうか。

 

いいや、良いはずがない。

 

確かに、美人は特をする。

私の何倍も生きやすい人生を、生きているのかもしれない。

 

だけど私はこの顔を、「治療しよう」だなんて思わない。

もしも手を加えるとするのなら、それは治療ではなく、アップグレード、アレンジだ。

 

綺麗になることは、義務ではない。

ブスは個性で、病気じゃない。

 

私の顔を、私以外の誰かに「正常じゃない」なんて決められて、たまるものか。

 

だから、私は、今日も、ブスを生きる。

お門違いな評価という名の差別に負けず、今日もブスを、胸を張って生きてやる。

 

yuzuka

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yuzuka

作家、コラムニスト。元精神科、美容整形外科の看護師で、風俗嬢の経験もある。実体験や、それで得た知識をもとに綴るtwitterやnoteが話題を呼び、多数メディアにコラムを寄稿したのち、peek a booを立ち上げる。ズボラで絵が下手。Twitterでは時々毒を吐き、ぷち炎上する。美人に弱い。

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