ベルリンときめけどひとり

考え方

道でモノを拾う大人がいちゃ、ダメですか?

どうもこんにちは。サマーです。

ぴくあぶさんで記事を書かせていただくのは約半年ぶりで、はじめましての方もたくさんいると思いますので、まずは自己紹介と、このコラムの概要についてを少し。

 

私はもともと出版社勤めで無茶な働き方をしていた、そんなに有能ではない編集者です。

いろんなことを気に病んではしょっちゅうしょぼくれて、生きるのがあまり上手じゃない自覚がありました。

 

「なんだかこのままいくと詰みそう」という漠然とした予感に突き動かされて、昨年3月になかば勢いでドイツのベルリンにあてもなく引っ越したんです。

だけど、生きる場所を変えても人間は変わらない。

 

つたない言語力で日常生活にも苦戦し、表情だけで悪意がないことを伝える能力に磨きをかけてきていたのに、ここへきてコロナによるマスク義務化。

そんなこんなでなかば引きこもりつつ、どこまでも自由で奔放な街のオリジナリティ溢れる人たちを、羨望の目でながめる日々を送っています。

根をはる場所にも困って、なんだかいつももがいている、そんな人間です。

 

このコラムでは、「まっとうな生活」とはとうてい言えないけれど、誰かと比べて落ち込むのにもそろそろ飽きた私が、ただただ自分のペースで暮らしてみている浮き足立ったその日暮らしの、(参考になるのかはかなり怪しい)絵日記のような記録をお届けします。

 

社会に属して毎日一生懸命に働いている人には、私の間の抜けた生活に触れて、もっともっと自分を褒めて欲しいし、「生産性」なんていうキラーワードにやられてしまいそうになっている人には、「ちゃんとしてない大人になっても、案外人間大丈夫だよ!」 ということを感じてもらえたら嬉しいですね。

 

最初のお話は、私がこの街に来たばかりの頃に励んでいたトレジャーハンティングについてです。

 

目次

道でモノを拾う大人がいちゃ、ダメですか?

私が日本からベルリンに引っ越してきた時期というのは、それまで会社勤めをしていて、月々決まったお給料をもらっていたのが、急にフリーランスとして生計を立てようとしていた時期でもありました。

それはどうあがいてもかなり無謀なことで、とにかく貯金を切り崩しながら、いかに日々の生活費を抑えるかに血まなこになっていました。

 

1ユーロ(120円くらい)使うのにもその場に立ちつくして熟考……なんて日常茶飯事。

一日3食、5ユーロ以下で生活していました(それは今もなのですが。すごい?)。

 

そんな私が、とにかく街を歩きたおしていて(電車もできるだけ乗りたくなかった)、ふと気がついたことがありました。

 

ベルリンの街にはいろんなモノが落ちている

 

「道端に、なにかが、落ち、いや、置いてある……」

 

アパートの入り口や軒下、植え込みの前なんかのふとしたスペースに、ぽかっと場違いなモノが唐突に鎮座しているのをよく見かけたのです。

それは服だったり、マットレスだったり、椅子だったり、食器類だったりするのですが、時々は、ダンボールや紙袋に入れられていたり、貼り紙がしてあったりもします。

 

ピンときて、貼り紙を翻訳してみると、

 

「自由に持っていっていいよ」

 

と書いてあるじゃないですか。

 

これはどうやらヨーロッパにはよくある風習らしくて、使わなくなったモノを単に捨ててしまうのではなく、道に置いておいて欲しい人に持っていってもらおうというのですね。

景観を悪くするし、雨が降ってそこに屋根がなければ、それらは正真正銘のゴミとなってしまうので、嫌がっている人も少なくないそうなのですが、お金を使いたくないのに生活必需品を揃えなければならなかった私にとっては、「なんて優しくて素敵な街なんだ!」と思わせられる光景でした。

 

路上トレジャーハンターの誕生

色めき立って欲しいものを道に探し始めた私。

 

移住して2週間も経つと、必要なものをピンポイントで見つけられるまでになっていました。

どんな道のどんな場所にどういうものが置いてあることが多いのかを掴み、磨き抜かれた私の嗅覚は次々にお宝を嗅ぎあて、なんなら路上のモノ同士を比べて「どっちを持ち帰るか」と、悩んでみるほどの上級者ぶり。

 

道で拾ったもの

こんなモノたちを拾ってきました。

 

これまでに私が道で拾ってきたのはざっとこんな品々です。

  • スーパーでも雑貨屋でも、なぜか見つけられなかった水切りザル(毎日使う)
  • かっこいい柿渋色の大きなティーポット(3、4人分のお茶が淹れられる)
  • 部屋干しがデフォルト、ドイツの必需品、洗濯物干し台(これなくしては生活できません)
  • 黒いポロシャツ(シンプルで重宝)
  • 星のマークが入ったセーター(クロップド丈でかわいい)
  • ドイツ語で謎の言葉が書かれたステッカー(辞書で調べてもわからない)
  • プラスチックのスツール2脚(ベランダに置いて日光浴に使っている)

 

「道でモノ拾う大人ってどうなの?」

 

なんて言われるとビクゥッとしてしまう私なのですが、

でもでも、「大人としてどうか」なんて煮ても焼いても食えないし、とりあえずよけてどっか、置いといたらダメですか?

 

ひとまず。ひとまずは!

 

だって……誰かにとってはいらなくなったモノでも、それを必要としている人がちょっと手間をかけて洗ったり修理したりして、もう一度使えば、お財布にも環境にも優しいし。

エコと節約ってけっこう仲がいいし。

 

あとね、何かを道で拾う時、それを置いていった人の「まだ使えるのにただ捨ててしまうのは忍びない」という気持ちも一緒にキャッチしたような気がして、なんだか連携プレーをしているような気持ちになれるんです。

 

「どんな気持ちで置いていってくれたのかな」

「これはどんな風に前の持ち主の生活にかかわっていたのかな」

 

想像してみると、なんだか自分の生活にもストーリーが増えたように感じて嬉しくなります。

 

……とかなんとか言いつつ、やっぱり何より散々歩きまわっては欲しいものを見つけた時の、その達成感がたまらない私なのでした。

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サマー

ライター/編集者 ベルリン在住。フリーランスでいろいろ書いています。ときどきイラストも。フェミニスト、動物好き、HSP気質。お仕事のご相談歓迎です。

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