炎天下の車内に取り残された、子どもの話を思い出すのよ。
日差しが透明のガラス越しに照りつけてきて、
身体の表面の水分を、蒸発させていくの。
暑くって熱くって、窓の外に「助けて」って言おうとするんだけど、
その声を出す、身を起こす体力すら持ち合わせていなくって。
芳香剤のにおいのするシートに横たわったまま、自分の身体の温度が上昇していく。
体温をあたえられる代わりに、ジリジリと体力が奪われていく。
苦しくて息がしづらくて、涙に変える水分を探しながら窓の外を見ると、
涼しげな顔をして日傘をさした、幸せそうな家族が横切っていくの。
こんなに近くにいるのに、別の人生を歩んでいるその人達。
「ああ、なんで。どうして」って。
それで、助けも呼ばないまま、呼べないまま、逃げ出すこともできないまま。
「誰か」を待つの。助けてくれる「誰か」を。
誰の声も届かない、車の中で。
私の恋愛って、いつもそういう感じよ。
目次
あんなに恋をしたのに、誰にも惜しまれず、私は上京した
ずっとこうだったわけではない。
私にだって、「普通」な時期があった。
小学二年生で初恋、それからもめくるめく恋の連続。
下駄箱の彼の上履きを履いて三歩歩いたり、
それでもそれは運命の人に出会うための過程だと思っていたし、
事情が変わったのは、
先に結婚した「勝ち組」達は、
「あんたも落ち着いた方が良いよ」
勝ち誇ったような表情に心が歪む。
私はあんた達と同じではない。
「
生きているだけで結婚競争に巻き込まれる田舎の風習に飽き飽きし
あれだけ恋をして、運命を追いかけていたはずだったのに、
ちゃんと向き合ってきたはずだったのに、
使い古された「最新のデートスポット」
「付き合ってください」
上野公園の橋の上、私に向かって手をのばす男がいた。
上京して2年がたった頃だ。
恋愛はこりごりだと思っていたはずの私は、
男と付き合うたびに失敗し、
嫌いな景色が増え、
結局私はまた、男に手を伸ばすのだ。
もう、目を輝かせられる場所なんてなくなってしまった。
途方にくれていた。
「上野公園」まで、もう、「何かのどこか」
私が求める愛は、どうやら底なし沼らしい。
言葉も、態度も、くれればくれるだけ欲しかった。
もっともっとと手を伸ばすうちに、相手の「愛」は底をつきた。
私が恋愛でうまくいかない要因は、多分そこだったのだろう。
東京に来て2年。使い捨てのような恋愛を繰り返していた。
「真実の愛」なんて転がっていないから
私はずっと、探してきた。何をって、「真実の愛」を。「運命の恋」を。
めくるめく奇跡を、いつだって探してきた。
ソレは道の端っことか、森の奥の木のそばとかに落っこちているはずで、
私はいつも足元をチェックして、いろんなものを拾い上げて見るんだけど
「なーんだ、ただの石ころじゃない」って、いつも期待外れだって声をあげて、
拾い上げた石を、放り投げた。
だけどね、違ったんだ。本当は間違えていた。
真実の愛なんて、落っこちていない。
本当は拾い上げた石ころを磨いて、作り出さなくっちゃいけなかったんだ。
愛も幸せも、受け身じゃない。きっと誰かと、作り上げていくもの。
私はそれをすっかり忘れて、いつだって嘆いていた。
「幸せにしてもらえなかった」「真実の愛なんて、どこにもない」って。
それじゃあ一生、ありつけるはずなんてないのにね。
美味しい料理は、手間をかけなきゃ作れない。
「いつか」は来ない。
「いつか王子様が」「いつか幸せに」
「いつか」は、呪いの言葉だ。
真実の愛も、幸せも、「いつか」なんて、やってこない。
ジリジリと蒸されていく車の中にいたって、私達はただ、体力を奪われていくだけだ。
私達にできること、それは決意すること。
「自分を幸せにするんだ」って。
自分自身で決意して、主体となって行動をしていくこと。
それができたら、私達の未来は多分、ちょっと素敵になる。
yuzuka
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