結婚願望が原因で、女友達と縁を切ったことがある。25歳のときだ。
当時の私は結婚願望があまりなかった。今の夫と交際2年目くらいで、「結婚? それもまた楽しそうだねぇ。でも、今はまだいいかな~」という感じだった。
一方、幼なじみのゆっこはめちゃくちゃ結婚願望が強かった。
私は、ゆっこの結婚願望に共感はしなかったけど、否定する気もなかった。結婚願望は人それぞれだ。ゆっこはものすごく結婚したがっていて、私はそうでもない。それだけのことだ。
だけど、私は次第にゆっこと会うのが苦痛になってきた。
彼女があまりにも「女の子はみんな、自分と同じくらい結婚したがってるはず!」と思い込んでいるからだ。
いやいやいや、結婚願望にも個人差があるだろうよ。
私は価値観を押しつけられることにひどく敏感で、ゆっこに「サキちゃんも結婚したいでしょ?」と言われるたびにモヤモヤし、最終的に彼女からフェードアウトした。
それから10年、彼女には会っていない。
目次
性格が合わない幼なじみ
私とゆっこは実家が徒歩1分の距離にある。親同士が仲がいいこともあり、小3くらいまでは頻繁に家を行き来する仲だった。
だけど今思うと、もともと性格が合わなかった。
たとえば、ゆっこは人生ゲームで負けると泣いて悔しがる。私はそこまで勝ち負けにこだわらので、「別にそんなことで泣かなくたっていいじゃん」と思う。
そういうちょっとした価値観の合わなさは、意外と人間関係に影響する。学年が上がるにつれて、私はクラスの友達といるほうが楽しくなり、ゆっこと遊ぶ回数が減っていった。
すると、ゆっこは「サキちゃんは私より○○ちゃんを選ぶんだね……」と恨み節を言うようになり、私は「めんどくせぇ」と思った。
中学時代はゆっこと同じ部活で、共通の友人ができた。だから、部活のほかの友達も一緒に6人で遊ぶようになり、高校生になってからもたまにそのメンバーで会っていた。
それは私が進学のために地元を離れても続き、年に2回、私が帰省するタイミングで会うのが恒例になっていた。
すべての女の幸せを、あんたが決めてくれるな
高校生になってお互いに彼氏ができると、私はますます「ゆっことは合わないなぁ」と感じるようになった。
ゆっこはわかりやすい恋愛至上主義で、とにかく彼氏最優先。そして、大学に入った頃からさかんに「結婚したい」と言うようになった。
小さな頃から「将来の夢はお嫁さん」と言っていたけれど、大学生になってからの彼女の結婚願望はちょっと怖いくらいだ。ゆっこがあまりに結婚、結婚と言いまくるので、みんなちょっと引いていた。
ゆっこはさも当然かのように言う。
「やっぱり女の幸せって、結婚して子どもを育てることだよね~」
えっ!?
10年以上前の当時ですら、そんなことを真顔で言うのは彼女くらいだった。
もちろん、ゆっこが結婚や子どもを望むのは彼女の自由だ。
だけど、それを望まない女性もいる。すべての女の幸せを、あんたが決めてくれるな。
私は、ゆっこが嫌いじゃない。
けれど、価値観が合わなさすぎて、年に2回みんなで会うとき以外は自然と疎遠になっていった。
その後、ゆっこはどんどん依存的になっていった。
彼氏がいるときは四六時中ずっと一緒にいたがるので、女友達とはほとんど遊ばない。だけど毎回「重い」という理由でフラれる。すると、女友達に依存し、毎日のように「淋しい」「遊ぼう」と言ってくるようになる。だけど、新しい彼氏ができるとまた音信不通。
その繰り返しらしい。
「らしい」というのは、私は地元を離れていたため、ゆっこの依存先にならなかったからだ。
彼女に依存された友人たちは、ひどく傷ついていた。そりゃあそうだ。毎日のように来ていたメールが、「私、彼氏できたの~」のひとことでパッタリと途絶える。友達を、淋しさを埋める道具としてしか見ていない。
だから、そんなふうに扱われた子は少しずつ、ゆっこと距離を置くようになった。
そのうち就活が始まるとそれぞれ忙しくなり、年に2回すら集まらなくなった。
結婚はまだいい。私は今が幸せだ!
25歳のとき、すごく久しぶりにゆっこからメールが来た。
それは結婚報告のメールで、よく会っていた5人に一括送信されていた。
へー、良かったじゃん。
そう思い、祝福のメールを返す。みんなもそれぞれ、祝福の言葉を返信していた。宛先に全員のアドレスが入った状態で返信するので、みんなのメールが読めるのだ。今でいうグループLINEのような感じ。
祝福のメールに、ゆっこがさらに返信を送る。
だけど、内容がトンチンカンだ。
たとえば、夢を叶えて家具デザイナーになったナオちゃんは、仕事の都合で関西にいて、彼氏とは遠距離恋愛をしていた。
ゆっこ「ナオちゃんはどう?」
ナオ「彼氏が東京だから遠距離だよ。週末にふたりであちこち旅行してる。遠距離楽しい!」
ゆっこ「遠距離なんてかわいそう! 早く結婚できるといいね」
いやいやいや、ナオちゃんは楽しいって言ってるじゃん!
その後、矛先は私に向かった。
ゆっこ「サキちゃんは彼氏さんと結婚するの?」
私「まだ結婚はいいかな~」
ゆっこ「そうなんだぁ。でも、早く結婚できたらいいね!」
……日本語読めてる?
当時の私は、心から「結婚はまだいい」と思っていた。
別に「絶対に結婚したくない」と思っていたわけではない。ただ、結婚について考える余裕がなかったのだ。
作家になる夢があって新人賞への応募を続けていたし、フリーターで一人暮らしだったから生活することでいっぱいいっぱいだった。
だけど、私は幸せだった。
好きなことをしていて、それを応援してくれる彼氏や友人がいて、毎日しんどいけど楽しかった。
だから、ゆっこに「結婚したいでしょ?」「結婚こそが女の幸せだよね」と決めつけられるのはとても不本意だった。
今の自分の幸せを否定されているように感じたのだ。
メールのことがあってから、私とゆっこはますます疎遠になった。
そして、いつの間にか縁が切れた。実家がすぐ近くなのに、帰省していても不思議とゆっこに会ったことはない。
多様性というワードが叫ばれるようになった今なら、ゆっこも「結婚願望は人それぞれだよね」と思うようになったのだろうか?
どうか彼女が、「結婚して子どもを育てるのが女の幸せだよね」という言葉で、周りの人たちを傷つけていませんように。
吉玉サキ
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